習氏の権威強化 独裁復活へ危険な一歩

2020年10月19日 05時00分 (10月19日 05時01分更新)
 中国が、名門大学での「習近平思想」の必修化を決めるなど、習国家主席(党総書記)の権威を高める動きを強めている。共産党ではなく、個人による独裁色を一層濃くする危険な流れだ。
 中国共産党は九月末、党中央の「核心」と位置づけられている習氏の権威をさらに高める党中央委員会工作条例を施行した。
 今月十二日に公表された条例には、習氏の名前を冠した指導思想により「思想的に全党を武装し、人民を教育する」と明記された。
 共産党は二〇一六年に習氏を別格の指導者である「核心」と位置づけた。新中国歴代指導者では、毛沢東、鄧小平、江沢民の三氏にしか使われていない称号である。
 一八年春の全国人民代表大会(国会)では、憲法を改正し二期十年とされてきた国家主席の任期を撤廃した。さらに、新条例は全人代の頭越しに、党が国家主席候補を決定できるとした。
 すでに、党、国家、軍の三権を握る習氏の権威をさらに高めようとする動きは、建前上とはいえ集団指導体制の中国を、毛沢東時代のような独裁体制に後戻りさせることになりかねない。
 政敵打倒のため毛氏が発動した文化大革命では、一億人余が何らかの被害を受けた。政治局常務委員による集団指導は、悲劇的な歴史に学んだ政治の知恵であった。
 最近、特に懸念されるのは、強権政治に公然と反発する知識人の弾圧や、学生に対する思想教育の強化である。
 新型コロナウイルスの感染について、有名な企業家の任志強氏は「言論封殺が拡大を招いた」と習政権を批判した。党幹部を養成する中央党校の教授だった蔡霞氏は「危機を脱する最善の方法は指導者を代えることだ」と友人らとの会合で述べ、録音が流出した。
 習政権は、党内部からすら噴出した批判に耳を貸すどころか、両氏の党籍を剥奪した。蔡氏は海外移住したが、任氏は横領罪などで懲役十八年の実刑判決を受けた。
 北京大などの名門大学では、これまでの「マルクス主義」などの科目に加え、社会主義現代化強国を建設するという「習近平思想」が必修になる。優秀な学生への思想教育は、批判の出ない社会を築くためであろう。
 外交部(外務省)内にはこの夏、「習近平外交思想研究センター」も設立された。「習思想」を旗印にした統制強化は、独裁への一歩にしかみえない。

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