コロナと介護 警戒しつつ日常に戻せ

2020年10月19日 05時00分 (10月19日 05時01分更新)
 政府は、新型コロナウイルス対策として制限している介護施設での家族らの面会を認めることを決めた。親しい人と直接触れ合う機会はとても大切だ。感染対策をしつつ日常を取り戻したい。
 キンモクセイが花をつけ甘い香りが漂う季節になった。本来なら介護施設の入所者と訪問した家族らが散歩をしたり、季節の移ろいを話題にしたりしていただろう。
 そんな日常の営みを少しずつ再開する動きが介護の現場でも求められている。
 面会緩和の方針は、十三日に開かれた厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」で示され、了承された。
 厚労省はこれまで、みとりなど緊急の場合を除き介護施設での面会中止を求めてきた。高齢者は感染すると重症化するリスクが高い。ひとたびクラスターが発生すると大きな被害が出る。入所者を守るためには致し方ない。
 施設の中には、パソコンの画面越しでのオンライン面会や、ガラス越しの面会を実施したり、入所者の生活ぶりを伝える写真を家族に送るなどしてしのいでいるが、やはり直接会いたいだろう。
 方針転換の理由は、高齢者の心身への悪影響である。
 広島大や日本老年医学会などが介護施設や医療機関を対象に実施した調査では、回答した施設の38・5%、ケアマネジャーの38・1%が活動制限により認知症の状態に影響が出たと答えた。
 面会制限で人と会う機会が減り、介護職員も感染を恐れて入所者への声掛けもしにくくなっているようだ。会話が減り刺激が少なくなったことで認知症のリスクが高まるとの懸念は無視できない。
 感染対策が進んだこともあり高齢者施設での大規模なクラスター発生は六月以降、減少している。
 厚労省は直接の面会に際し、症状のある人の面会を断ったり、マスク着用や手指消毒の徹底、面会後の室内の消毒などを対策に挙げている。外出も生活や健康維持に必要な活動は制限せず、対策をとりながらの実施を認める。
 ただ、面会再開などの最終的な判断は施設に委ねられる。地域の感染状況を踏まえての判断になるが、感染が発生した場合を考えると施設にとっては慎重にならざるを得ないだろう。
 政府は感染防止に配慮した具体的な面会や外出方法を示すべきだ。自治体や介護事業者も知恵を出し合い感染対策と穏やかな日常生活の両立を実現してほしい。

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