リニア静岡工区周辺ルポ 準備工事、一進一退

2020年10月18日 05時00分 (10月18日 05時03分更新)
椹島で建設が進む工事関係者の宿舎=静岡市葵区で

椹島で建設が進む工事関係者の宿舎=静岡市葵区で

  • 椹島で建設が進む工事関係者の宿舎=静岡市葵区で
  • 椹島に建設予定の導水路トンネル排水出口付近(左)=静岡市葵区で
  • 昨年の台風19号で崩落した林道(上)の復旧工事=静岡市葵区で
 リニア中央新幹線の着工を国が認可し、十七日で六年となった。南アルプストンネル静岡工区(静岡市葵区)を巡り、県とJR東海の協議が難航し、今も着工のめどが立っていない。予定地周辺では着工に向けた準備工事が進むが、災害の影響も加わり、一進一退にも見える。肌寒さを感じるようになった十月初旬、現地を訪れた。
 七日午前五時、JR静岡駅前を出発し、車で三時間ほど北上。リニアの工事現場につながる作業道の林道東俣線の入り口、沼平に着いた。最北部の集落の井川地区からさらに二十キロ以上入った場所だ。
 静岡市が管理する東俣線は沼平−二軒小屋間の全長二七・三キロ。未舗装のため、市との合意でJRが昨年末から改良工事を始めている。一方、昨年十月の台風19号で路肩崩落が相次ぎ、市の復旧作業が同時並行で進む。さらに今年六〜七月の長雨で被害が増えた。
 沼平から車を進めると、それでも道が改善されていることに気付いた。六月の川勝平太知事の視察に同行したときは数百メートルほどだった舗装が、三キロほど北の茶臼岳の登山口まで続いていた。
 さらに一時間ほど北へ行き、一八・二キロ地点に到着。路肩が欠損し、「全面通行止め」と書かれた看板の横を、大型トラックが何台も走る。幅三メートル、全長百メートルほどの迂回(うかい)路が完成していたが、ここより北は関係者以外は原則通行できない。
 少し南に戻り、椹島(さわらじま)ヤードに到着。ヤードは作業員の宿泊施設や資材置き場に使われる作業基地で、椹島のほか、さらに北の千石、西俣の三カ所で整備中だ。知事の視察時に鉄骨だった宿舎は、変わっていないように見えた。作業員は十数人。急ぐそぶりは感じられない。進捗(しんちょく)状況を聞くと、「JRに聞いて」とそっけなく断られた。
 JRによると、椹島の宿舎は二棟が完成し、残り三棟の整備を進めている。千石では宿舎全八棟が完成済み。担当者に「遅れているのか」と質問すると、「遅れている認識はない。今、着工しても、当面の間は工事に対応できる施設を確保している」と答えた。
 椹島は、水問題のきっかけとなった本体トンネルの工事で出る湧水を大井川に戻す「導水路トンネル」の排水口も造られる予定だ。
 帰り道、井川地区の地域振興策としてつくられる県道トンネル(全長四・六キロ)の予定地にも寄った。地元の悲願で、県道三ツ峰落合線と南アルプス公園線を結ぶ。費用は全額JRが負担。二五年度の完成予定だが、看板などもなく、作業の痕跡も見当たらない。
 この辺りはよく霧が出ることで知られている。動いているのか、止まっているのか。どこに向かっているのか…。リニアもまるで、霧の中にいるようだ。
  文・広田 和也
  写真・立浪 基博

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