<なんしん見聞録>飯田の丸恵食堂 地域とともに55年、リニア関連工事で閉店
2020年10月18日 05時00分 (10月18日 05時01分更新)
仕事に精を出すサラリーマンたちに愛されてきた飯田市上郷飯沼の定食屋「丸恵(まるえ)食堂」が三十一日、五十五年間掲げてきたのれんを下ろす。リニア中央新幹線開通に向けた周辺道路改良工事で、経営を続けるのが難しくなったためだ。店主の丸山孝さん(67)は「お客さんに支えられてやってこれた」と感謝の思いを胸に、最後の二週間、全力で得意客の胃袋を満たす。
たくさんの車が行き交う国道153号沿いで、控えめに看板を掲げる丸恵食堂。外観は一般住宅のよう。のれんをくぐると、食卓にテレビ、カウンター越しに中が見える調理場、店内もやはり、実家に帰ってきたかのような家庭的な雰囲気が広がる。
前身は丸山さんの伯母が戦前、同市天竜川の弁天橋近くで始めた料亭「松流亭」。伊那谷に大きな被害を出した三六災害(一九六一年)の後、治水のための護岸整備で移転対象となり、六五年に現在の場所で、料理人だった父も加わって丸恵食堂を開いた。丸山さんは調理師学校を出た後に店を手伝い始め、父と伯母が他界してからは、妻のちえ子さん、長女の房枝さんと三人で切り盛りしている。
二〇一九年の市の住民説明会で、丸山さんの土地が改良工事の対象となる...
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