鏡花の作品古びない 金沢21美でトーク

2020年10月17日 05時00分 (10月17日 12時10分更新)
「『絵本の春』には鏡花の代表的なモチーフが詰まっている」と語る金井田英津子さん=金沢21世紀美術館で

「『絵本の春』には鏡花の代表的なモチーフが詰まっている」と語る金井田英津子さん=金沢21世紀美術館で

  • 「『絵本の春』には鏡花の代表的なモチーフが詰まっている」と語る金井田英津子さん=金沢21世紀美術館で
  • 「鏡花作品は古びないという点で抜けている」と話す東雅夫さん=金沢21世紀美術館で

「絵本の春」版画家金井田英津子さん


 アンソロジスト東雅夫さん


 挿画本や怪談集などさまざまに形を変えて書籍化され続けている金沢市出身の作家泉鏡花の作品。短編「絵本の春」(朝日出版社)を独特の表現で画文集として出版した版画家の金井田英津子さんと、テーマや著者ごとに作品を編さんする数々のアンソロジーを手掛けるアンソロジスト東雅夫さんが、金沢21世紀美術館で開かれた「現代の鏡花本−描くということ、編むということ」と題したトークイベントで、鏡花本の世界を語り合った。(松岡等)
 二人は「文豪怪談傑作選」シリーズ(ちくま文庫)の全十八巻で東さんが編集、金井田さんが表紙絵を担当した旧知のコンビ。金井田さんは萩原朔太郎の「猫町」や夏目漱石の夢十夜」などを画文集(ともに長崎出版)にする一方、東さんは「おばけずき 鏡花怪異小品集」、「泉鏡花<怪談会>全集」(春陽堂書店)などを編さんしている。
 もともと鏡花作品は、日本画家鏑木清方(かぶらききよかた)や鰭崎英朋(ひれざきえいほう)、小村雪岱(こむらせったい)らの表紙絵や装丁で「鏡花本」と呼ばれるほどの美本として出版されてきた。金井田さんは「浮世絵の伝統が受け継がれ、モノとしての価値があって貴重」と指摘した。
 「絵本の春」を描くことについては、泉鏡花記念館の穴倉玉日(たまき)学芸員にすすめられ、「これだと思った」と明かした金井田さん。白いアクリル板の上に黒の絵の具を塗った上で、ひっかいて描くスクラッチという技法を使いモノトーンで現代的に表現した。これを東さんは「知っている金沢の小路やしもた屋のたたずまいが描かれ、幻想とリアルの両方が絡み合った世界をつくった」とたたえた。
 また、東さんは「『絵本の春』は鏡花作品の中でそれほど知られていない作品だが、英文学者の由良君美(ゆらきみよし)さんは早い時期に『化鳥(けちょう)』とともに評価していた」と指摘。「国文学の流れとは異なる視点で見ていたからではないか」と指摘した。
 鏡花作品を「内容的には今日的、普遍的なものを含んでいる」と語った金井田さん。東さんも「一見、難物だが、古びないという点で他の作家と比べても抜けている。これからも鏡花もので本を編めればうれしい」と話した。
     ◇
 金井田さんの「絵本の春」の原画展は、金沢市下新町の泉鏡花記念館で十一月八日まで開催中。トークイベントの模様はユーチューブの「金沢ナイトミュージアム2020」の公式チャンネルで見ることができる。
 本紙では鏡花の短編「龍潭譚(りゅうたんだん)」をイラストレーター武藤良子さん(東京都)のイラストを添えて、毎週土、日曜日に連載している。

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