【宝生流シテ方・佐野玄宜の能楽談儀】(10) 神話や古典も学べる能

2020年10月17日 05時00分 (10月17日 10時55分更新)
神代の物語を語る三輪の神=2011年9月、石川県立能楽堂で

神代の物語を語る三輪の神=2011年9月、石川県立能楽堂で

  • 神代の物語を語る三輪の神=2011年9月、石川県立能楽堂で

 「面白い」という言葉は皆さんご存じかと思いますが、どうして「面」が「白い」と書くか知っていますか。
 神々の時代、素戔嗚命(すさのおのみこと)が乱暴を働くので、天照大神(あまてらすおおみかみ)が岩戸にお隠れになってしまいました。天照大神は太陽神ですから、世の中が真っ暗になってしまいます。困った神々は岩戸の前で神楽を舞います。その様子が気になった天照大神は、岩戸を少し開いて覗(のぞ)こうとします。すると、その隙間から光が漏れ、神々の顔を白く照らしました。それを見て「面白や」と言ったのが始まりと言われます。
 また世阿弥は「風姿花伝」で、このときの神楽が能の始まりであると語っています。
 能「三輪」は、大和国(今の奈良県)の三輪の里に庵(いおり)を結んでいた玄賓(げんぴん)という僧の前に三輪の神が現れ、二つの神話を物語る演目。一つは今の天岩戸隠れの話。もう一つが神婚説話。長年連れ添ったある夫婦がいましたが、夫はなぜか夜しか現れないので、昼間も顔を見せてほしいと妻が訴えます。すると、姿を見せることは恥ずかしくてできない、それならば夫婦の契りも今日までであると別れを切り出されます。悲しむ妻は、夫の帰る場所を知りたいと、着物に糸を縫いつけ、後でそれをたどっていくと、三輪山の杉の木に着いたのでした。実は三輪の神だったわけです。その時、糸が三輪(三巻き)残っていたので「三輪」という地名になったのです。
 能には、このような神話をもとに作られた演目がたくさんあります。十二月の定例能で演じられる「絵馬」も同じく天岩戸説話を描いたもので、こちらは天照大神が現れて、その時の様子を再現してみせます。
 江戸時代、寺子屋では能の謡を教えていました。謡をやれば歌唱の練習になると同時に、神話や仏教、源氏物語、平家物語などさまざまなものを学べるわけですから効率的と考えてのことでしょう。戦後、日本の教育では、日本という国家の成立や神話についてタブー視されてきた現実がありますが、今後あらためていく必要があるのではないでしょうか。 (さの・げんき)
◇金沢能楽会十一月定例能(11月1日午後1時から石川県立能楽堂)
 ▽能「三輪」(シテ佐野由於)
 ▽仕舞「江口」(渡辺荀之助)
 ▽狂言「蟹山伏」(山伏・炭哲男)
 ▽能「鵺」(シテ渡辺茂人)
 ▽入場料=前売り一般2500円(当日3000円)、若者割(30歳未満、当日のみ)1000円、中学生以下無料(問)石川県立能楽堂=電076(255)0075

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