生態系問題が新たに浮上 リニア着工

2020年10月17日 05時00分 (10月17日 05時03分更新)
 リニア中央新幹線南アルプストンネルの静岡工区(静岡市葵区)を巡り、川勝平太知事は七日の会見で「南アルプスの保全、水の確保、流域住民の生活を守る、これが私の使命」と改めて主張。JRとの溝は深い。仲介役の国土交通省が立ち上げた有識者会議(座長・福岡捷二・中央大研究開発機構教授)で、大井川への影響などを科学的に検証する議論が続いており、これまで五回開催。生態系への影響で、新たな問題が持ち上がるなど、出口は見通せていない。 (牧野新)

◆水問題

 環境影響評価(アセスメント)で、軽減措置をしなければ、毎秒二トン減少するとJRが試算した大井川の流量が最大の焦点。有識者会議は、減った全量を大井川に戻す方法と、トンネル掘削に伴う湧水が及ぼす中下流域への影響を優先して議論している。
 中下流域への影響では、トンネル湧水や、地下水の動きを予測した「水収支解析」のデータをJR側が会議に提出。七月の会合で福岡座長が、トンネル工事による上流の地下水の変化が下流域に与える影響は「軽微」との認識を示し、県側は反発。「県民の納得は得られない」とする意見書を提出した。
 全量の戻し方は湧水をポンプでくみ上げる方法と導水路トンネルで下流に流す方法をJR側が提示。ただ山梨、長野両県に一定期間流出するため、解決策は見いだせていない。

◆生態系

 南アルプスには絶滅危惧種のヤマトイワナやクマタカなど希少生物が分布。JRは現地調査を実施してきたが、新たな課題が浮上した。JRは水収支解析の結果、上流部の地下水位が百〜三百メートル超低下すると試算。生態系に影響する恐れがある。
 地下水位が大きく下がるエリアは国立公園の「特別保護地区」と重なることも判明。自然公園法は特別保護地区に最も厳しい保護規制を課しており、地下を含む土石採取や土地形状の変更などには、環境相の許可が必要となる。

◆残土

 静岡工区のトンネル工事で出る土は東京ドーム三杯分を超える約三百七十万立方メートルに上る。JRはいずれも工事現場近くの大井川沿いで処分する方針を示す。
 工事ではヒ素などの重金属を含む「要対策土」が発生する可能性もある。県は土砂災害などで有害物質が大井川に流入する恐れがあるとして、流域外への搬出を求めている。一方、JRは十万立方メートルを上限に大井川沿いの藤島沢での処分を検討。遮水シートでの封じ込め策を提示している。

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