なぜ中日のドラフト5位は“当たる”のか?スカウトが口をそろえた下位ならではの事情【増田護コラム】

2020年10月17日 06時00分

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仮契約を終え、米村スカウト(右)に帽子をかぶせてもらい笑顔を見せる日本生命・大島。左は日本生命・杉浦監督

仮契約を終え、米村スカウト(右)に帽子をかぶせてもらい笑顔を見せる日本生命・大島。左は日本生命・杉浦監督

  • 仮契約を終え、米村スカウト(右)に帽子をかぶせてもらい笑顔を見せる日本生命・大島。左は日本生命・杉浦監督
  • 現役時代の米村明投手
 まもなくドラフト会議(10月26日)である。スカウトにとって腕の見せ所は、下位指名。近年の大ヒットはDeNAの4番佐野恵太内野手(25)で、明大から9位指名だった。中日の場合、5位に活躍した選手が多い。高校生と大学・社会人が統合された2008年までの5位指名はこうだ。
19年 岡林勇希外野手(菰野高)
18年 垣越建伸投手(山梨学院高)
17年 伊藤康祐外野手(中京大中京高)
16年 藤嶋健人投手(東邦高)
15年 阿部寿樹内野手(ホンダ)
14年 加藤匠馬捕手(青学大)
13年 祖父江大輔投手(トヨタ自動車)
12年 溝脇隼人内野手(九州学院高)
11年 川崎貴弘投手(津東高)※引退
10年 関啓扶投手(菰野高)※引退
09年 大島洋平外野手(日本生命)
08年 岩田慎司投手(明大)※引退
 ほとんどが1軍を経験し、大島、阿部、祖父江は不動の地位を確保。藤嶋、加藤も存在感を示し、岡林ら期待の若手もいる。それ以前にさかのぼれば、山本昌広(83年、日大藤沢高)、音重鎮(87年、新日鉄名古屋)、山田喜久夫(89年、東邦高)、井端弘和(97年、亜大)、土谷鉄平(00年、津久見高)が5位入団である。
 「1、2位と違って契約金も抑えられるし、実績がなくても下位になれば会議も通しやすい。一芸に秀でていたり、可能性にかけやすい」とスカウトは口をそろえる。いわば5位クラスは他球団の動向をにらんだ勝負銘柄なのである。
 現在、チーフとしてスカウト陣を束ねる米村明さんもPL学園―中大―河合楽器からの5位入団。金メダルに輝いたロス五輪代表メンバーで、中日ではパームボールを武器にセットアッパーとして活躍し、88年には毎回被安打での完封勝利の怪記録を達成した。獲得のいきさつを当時の田村和夫スカウト部長に聞いたことがある。
 「本人が聞いたら怒るだろうけど、こちらの事情で指名したんです。でも勉強になった。大学の後輩ですが、こういう伸びしろもあるのかって。あれから選手を見る目が変わりました」。当時、高校球界は桑田・清原のKKコンビが話題独占。しかし中日にはPL学園にパイプがなく、事前に実績をつくる必要があったのだそうだ。
 その米村さんは現役時代にこう話した。「プロになってみて、とてもこのままではやっていけないと思った。だから必死になってパームボールを覚えた。肘を痛めるからやめろと周囲には止められたけど、勝負をかけるしかなかった」。その負けじ魂がスカウトにも想定外だった伸びしろを生んだ。見抜くべきはそこだろう。
 スカウトに転身した米村さんは、吉見一起(トヨタ自動車)を希望枠で、大野雄大(仏教大)を1位で一本釣りした。いずれも故障を理由に他球団が二の足を踏む中、克服する力まで見抜いての指名だった。子連れルーキーの大島を落合監督に強力に推薦したのも米村さんである。
 中日にとって長年の課題だった捕手は何とか先が見えてきたが、巨人に大差をつけられた打撃、中でも長打力をどう補っていくのか、投手力の整備は…。下位指名に秘策があるのかも含めてドラフトに注目したい。
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