本文へ移動

騎手たちのライバル物語 武豊と蛯名正義[本城雅人コラム]

2020年10月12日 06時15分

このエントリーをはてなブックマークに追加
蛯名正義と武豊

蛯名正義と武豊

「ぱかぱか日和」


 武豊騎手がデビューした時、師匠の武田作十郎調教師からは「河内(洋調教師)を見とけ」とだけ言われたそうだ。武豊騎手は教え通り、兄弟子の騎乗フォームやレースでの判断力、さらに厩舎関係者へのあいさつや生活態度などすべてをまねした。それと似たことを他の騎手からも聞いた。それが武豊騎手と同期の蛯名正義騎手で、2001年にリーディングになった時「同期にユタカがいたからね。ユタカがやっていることをまねしていたらここまで来られた」と話していた。
 二人はお互いを認め合っているし、同じ年の凱旋門賞に騎乗した10年、武豊騎手はナカヤマフェスタで2着に入った同期をたたえ、その夜は遅くまで二人でパリの町を飲み歩いた。だが普段から特に仲がいいかと言えばそうでもない。前出のセリフを聞いた前年、蛯名騎手は米国東海岸に拠点を移したが、武豊騎手も米国西海岸で騎乗していた。同じ米国内にいながら蛯名騎手が帰国し、武豊騎手が西海岸からフランスに移るまでの半年間、二人がプライベートで会ったことはなく、お互いの米国の携帯電話の番号も知らなかったように思う。ともに緊張感を持って接しているようだった。
 騎手にはワインのヴィンテージイヤーのように当たり年がある。横山典騎手、松永幹調教師の競馬学校2期、四位調教師、藤田伸二さんの7期、福永、和田竜騎手らの12期、川田、藤岡佑、吉田隼騎手らの20期生、松山、丸山騎手は25期で同期だし、藤田菜騎手が脚光を浴びた32期からは坂井騎手が現れた。最近は岩田望、斎藤、団野、亀田騎手の35期生に勢いがある。
 同期が注目されると刺激になるし、つらい時に励まし合うこともできるが、不思議なものでライバルは仲の良さが外に見えた途端にあまり成長しなくなる。それぞれが本気で戦い続けた後にたたえ合う関係が、同期の物語としては理想的なのかもしれない。(作家)

関連キーワード

おすすめ情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ