不穏さ 内省促す 金沢21美「ダブル・サイレンス」

2020年10月10日 05時00分 (10月10日 11時15分更新)
マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》(Courtesy : Zeno X Gallery , Antwerp , Tanya Bonakdar Gallery , New York and Gallery Koyanagi , Tokyo)=撮影:木奥惠三、金沢21世紀美術館提供

マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》(Courtesy : Zeno X Gallery , Antwerp , Tanya Bonakdar Gallery , New York and Gallery Koyanagi , Tokyo)=撮影:木奥惠三、金沢21世紀美術館提供

  • マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》(Courtesy : Zeno X Gallery , Antwerp , Tanya Bonakdar Gallery , New York and Gallery Koyanagi , Tokyo)=撮影:木奥惠三、金沢21世紀美術館提供
  • 右にミヒャエル・ボレマンス《貸し付け》(Courtesy : Zeno X Gallery , Antwerp)。左奥にマーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》が見える=撮影:木奥惠三、金沢21世紀美術館提供
  • (左)マーク・マンダース《椅子の上の乾いた像》(東京都現代美術館蔵)、(右)ミヒャエル・ボレマンス《オートマト(I)》(Courtesy : Zeno X Gallery , Antwerp)=金沢21世紀美術館で

◇二人展
画家 ボレマンスさん
彫刻家 マンダースさん


 伝統的な西洋美術史の流れを踏まえながら、それぞれに独自の表現で現代を見詰める画家ミヒャエル・ボレマンスさんと彫刻家マーク・マンダースさんの二人による展覧会「ダブル・サイレンス」が、金沢21世紀美術館で開かれている。ともにベルギーを拠点にしながら、今回が初めてのコラボレーション。それぞれの作品が沈黙の中で響き合い、見る人に深い内省を促す。(松岡等)
 ボレマンスさんは一九六三年、ベルギー生まれ。ベラスケスやゴヤ、マネなど伝統的な西洋絵画の技法やテーマに関心を寄せながら、日常の不穏さや危うさを表現する。高さ三メートルの絵画「貸し付け」は、ドレスアップした女性の後ろ姿を鮮やかな筆致で描きながら、そこには頭がない。同じく「天使」は、ベルギーの女優をモデルにしながら顔だけが黒々とし、異様なほどのスケール感とともに不安をかきたてる。
 一方、マンダースさんは六八年、オランダ出身。若い時から「建物としてのセルフ・ポートレイト」というコンセプトからすべての作品が自画像の一部を構成するという考えの中で制作を続ける。
 巨大な四人の彫像を組み合わせた「4つの黄色い垂直からなるコンポジション」は、一見すると粘土で造られているように見えるが、ひび割れやこぼれ落ちた破片までが青銅製で、着色をほどこしたもの。制作途中のようでもあり、風化し崩れかけているかのようでもある。縦に埋め込まれた板が見る者に痛々しさを強いてくる。
 ボレマンスさんの絵画「オートマト(Ⅰ)」と、マンダースさんの彫刻「椅子の上の乾いた像」の組み合わせは、展覧会のメインビジュアルにも使われた。後ろで手を組む三つ編みの少女の後ろ姿の肖像画と、椅子に体を横たえたまま下半身を奪い取られたような彫像は、不気味なほど呼応して強烈なイメージを呼び起こし、残酷で不穏な物語を想像させる。
 21美独特の建築空間にマンダースさんのアトリエをしつらえ、そこにボレマンスさんを招くという想定で展示された約六十点。新型コロナウイルス感染拡大の影響で二人の来日がかなわず、作家と学芸員がリモートでやりとりをして準備した。観覧は事前に希望日を指定する予約券を購入する日付指定制で、コロナ時代の美術館展示の一つのあり方を示す。美術館のユーチューブ公式チャンネルでは、作家のインタビュー映像も配信している。
 来年二月二十八日まで。

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