バイオ燃料電池 北陸が切り開く 金大や金沢工大 研究開発進む

2020年10月9日 05時00分 (10月9日 10時14分更新)
片岡教授は正極側の還元酵素「ラッカーゼ酵素」の研究で実績がある=金沢大で

片岡教授は正極側の還元酵素「ラッカーゼ酵素」の研究で実績がある=金沢大で

  • 片岡教授は正極側の還元酵素「ラッカーゼ酵素」の研究で実績がある=金沢大で
  • 土佐教授は微生物燃料電池の下水処理場への導入に向け研究している=金沢工業大で

ペースメーカーや下水処理場 利用期待

 酵素や微生物といった身近な生物の力を利用した「バイオ燃料電池」。生体触媒の化学反応により発電する環境に優しい次世代エネルギーとして注目され、それぞれ心臓のペースメーカーや下水処理場などへの利用が期待されているが、発電効率やコスト面などで課題がある。金沢大や金沢工業大でも研究開発が進められており、北陸発の技術が普及を後押しする可能性もある。(瀬戸勝之)
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 「酵素燃料電池」はブドウ糖や果糖が燃料となる。負極側では「酸化酵素」の働きによって電子と水素イオンが発生し、電子が外部回路を通じて正極側に流れて発電する。正極側では「還元酵素」が移動してきた電子と水素イオンを用い、溶液中の酸素と結合させるため水しか発生しない。
 金沢大理工研究域の片岡邦重教授の研究室は、還元酵素の一つ「ラッカーゼ酵素」の研究で国内屈指の実績を誇る。電極を傷める有害な活性酸素を出さず、効率良く酸素を還元する性質があり電池の長寿命化や出力向上の鍵を握る。
 「ラッカーゼ酵素は複数の銅原子を含む青色の酵素で、輪島塗などに使われる漆からも抽出されます」と片岡教授。同研究室は、この酵素の製造や遺伝子組み換え技術に優れ、複数の種類で特許を取得。京都大と共同研究も進めている。
 実験では最大〇・八ボルトの電圧が半年間続き、安定した出力を維持することを確認した。一緒に研究を続けてきた桜井武名誉教授は「血液中のブドウ糖や酸素でも動くため、心臓のペースメーカーなどに乾電池やボタン電池に代わって使える可能性がある」と見通す。
 片岡教授は「コスト面などで課題もあり、現状では活用できる分野は限られる」としつつ「酵素が酸素を還元するメカニズムには、まだ謎の部分が多い。これを解明できれば、さらに応用範囲が広がるはずだ」と力を込める。
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 「微生物燃料電池」は汚水中の有機物を燃料として電気をつくることができる。金沢工業大の土佐光司教授は「発電と水質浄化という『一石二鳥』の効果が得られる」として、将来的に下水処理場への導入を目指している。
 土壌中などに広く存在する「ジオバクター属」などの微生物は、汚水中の有機物を分解する際に電子を発生するため「発電微生物」と呼ばれる。微生物燃料電池では、これが触媒として働き、負極側に電子を受け渡すことで発電する。
 土佐研究室では、金沢市内の下水処理場から採取した廃水を利用。電極の素材には導電性に優れた炭素材料のカーボンクロスを使っている。
 実験では、汚水中の大腸菌を処理する作用を確認した。二百ミリリットル容器に大腸菌を混ぜた溶液を入れて観察した結果、七日後に99・4%も減少。ただ電圧は〇・二五ボルトと微弱だった。
 土佐教授は「二〇三〇年ごろの実用化が見込まれているが、改良点は多い。さらに発電効率を高める研究を続けていきたい」と話している。

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