<EYES> フォトジャーナリスト 安田菜津紀さん 差別なき日まで

2020年10月8日 05時00分 (10月8日 11時11分更新)

「カウンター」側に駆けつけた高校生が掲げていた手書きのプラカード

 9月20日、神奈川県の川崎駅前。この場所では何年もの間、特定の民族や国籍を侮辱したり、排斥することこそ正義であるかのような言動を繰り返したりする集団によって、ヘイト街宣が繰り返されてきた。この日も事前に街宣の予告があり、警察の鉄柵に守られているかのような一角に、彼らは現れた。
 市ではヘイトスピーチに刑事罰を科す「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」が7月に施行された。集団の掲げているプラカードを見る限り、一行はこの条例を「日本人へのヘイト」ととらえているようだ。差別問題とは何かを、根本から履き違えている。
 例えば外国籍であるがゆえに選挙権がなく政治に直接訴える術(すべ)が乏しい、もしくは人数としてマイノリティーであるなど、差別とは、力の不平等の上に起きていく。それを、「どっちもどっち」かのように並列して語ろうとすること自体が暴力的だ。
 ヘイト街宣と対峙(たいじ)する鉄柵の外側には、「カウンター」と呼ばれる差別反対を訴える人々が集まり、声を張り上げ続ける。その中に、一人の高校生の女の子がいた。「韓国人の友人がいる」という彼女は、日本が好きなその友人が安心して来日できるようにという願いとともに、この場に足を運んだのだという。
 一人の大人として、高校生や次世代に、差別のまん延する社会を手渡さないための行動を続けたい。
 <やすだ・なつき> 1987年神奈川県生まれ。NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)他。上智大学卒。TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

◆NPO法人Dialogue for Peopleのサイトはこちらから。

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