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武豊騎手の夢を砕いたのは『コンタミ』 本紙獣医師記者が“凱旋門賞の悲劇”となった薬物混入を徹底解説 

2020年10月9日 06時00分

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ソットサスが制した今年の凱旋門賞。その陰で薬物混入による悲劇が…(AP)

ソットサスが制した今年の凱旋門賞。その陰で薬物混入による悲劇が…(AP)

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 4日の凱旋門賞は、直前にAオブライエン厩舎の4頭が取り消した。同厩舎の使っていた飼料に薬物混入があり、出走すればドーピングとなる可能性があった。昨夏、日本でも飼料添加物に製造ラインにおける薬物混入の疑いが発覚し、大量取消が生じる事件があったが、ほぼ同じ構図だ。
 飼料などの製造ラインや、実験室において、意図せぬところに意図せぬ薬物、細菌、ウイルスなどの混入が起きることを「コンタミ」と言う。英語で「汚染」の意の「コンタミネーション」が、日本語の常として語呂のよいサイズに略されたものだ。薬品や微生物、放射性同位体を扱う理系の研究者、学生にとってはほとんど日常語で、例えば焼き肉の席で「塩だれにみそだれがコンタミした」のような使い方もされる。本筋の使われ方でも、とにかく忌むべき現象だ。
 Aオブライエン厩舎の飼料にコンタミが起こったのは「ジルパテロール」という薬物。アドレナリンに形の似た有機化合物で、生体内ではアドレナリンによって動かされる生化学反応の一部をこの薬物によっても動かすことが出来る。牛に飼料添加剤として与えると、脂肪蓄積の抑制、脂質代謝とタンパク質合成の促進によって、筋肉増大を図ることが出来る。
 95年にメキシコと南アフリカで初めて承認され、次いでコスタリカ、ドミニカ共和国、コロンビア、エクアドル、ホンジュラス、ニカラグア、パナマでも承認された。06年に米国、09年にカナダで承認。使用目的からも明らかなように、北米2国では肉牛に限った使用で、乳牛では使用は認められていない。
 日本では動物用、ヒト用、どちらも承認されていない。使って得られる牛肉は脂質がほとんどなく、赤身ばかり。日本ではそもそも需要が生じないだろう。
 馬では10年に投与実験の論文があり、投与後5日程度まで急速に排出されるものの、微量の体内残留が長く、3週間後にも尿中から検出されたと報告されている。今回の4頭含め、災難に遭った馬たちの今後が心配である。

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