広がるオルタナティブスクール・後編 多様な教育の持続探る

2020年10月8日 05時00分 (10月8日 13時29分更新)
カードや紙飛行機を使って遊びながら学ぶ子どもたち=岐阜県多治見市の大地組スクールで

カードや紙飛行機を使って遊びながら学ぶ子どもたち=岐阜県多治見市の大地組スクールで

  • カードや紙飛行機を使って遊びながら学ぶ子どもたち=岐阜県多治見市の大地組スクールで
 近年、広がりをみせる民間の教育機関である「オルタナティブスクール(もうひとつの学校)」。教育方針や理念が共感を呼んでいる。ただ、学校法人として認可されていないが故に、スクール運営の持続性や、公的な学校現場での理解不足など課題も少なくない。多様な学びを保障するために必要なことは−。 (宮崎厚志)
 自由度の高いオルタナティブスクールへのニーズは、コロナ禍によっても加速している。愛知県岡崎市の「三河サドベリースクール・シードーム」では六月以降、見学や体験入学の希望者が月平均で前年の七倍に増えた。感染対策で制限の多い公立校に嫌気がさした子や、興味のある活動に没頭できた休校中と学校再開後のギャップに面食らった子が、通い始めている。
 一方、公立の学校現場では多様な教育を選択することへの理解が進んでいない。一年生の娘が自身の決断で岐阜県多治見市の小学校から、同市の「大地組スクール」に“転校”した梶尾由喜子さん(38)は、学校側と四度面談。自分で学ぶ内容を決められることや、スクールをつくり上げていく魅力を説明したが、学校側に「中学生レベル。九九はどうするのか」「徐々に小学校に戻ってくるようにしてほしい」と逆に諭され、話のかみ合わなさを感じた。
 多くの相談を受ける「大地組」代表の浅井智子さん(52)も「認可外の学校に行くことを『義務教育違反』や『犯罪者』と言われた親もたくさんいる」と嘆く。教育基本法の義務教育の項を理解しておらず、多様な学びの場を認める教育機会確保法を知らない教員もまだ多いという。
 ただ「大地組」を九月の開校日に視察した古川雅典多治見市長は「教育は多種多様でいい。分離対立せずに、公立小にも良いところを注入するミックスジュース方式でやっていきたい」と明言。後日訪れた河本英樹副教育長も「就学する学校に通うことが前提だが、生徒も先生も上手に交流できれば」と理解を示した。風向きは変わりつつある。
 スクール側には持続性という大きな課題がある。補助金がなく、財政基盤が不安定なところが多い。運営や理念が特定の個人に依存する場合も懸念材料となる。
 昨年、岐阜県内のスクールが経営難とスタッフ間の価値観の違いが原因で解散。その生徒を引き受ける形で岐阜市に「あいぎふ自由学校」を立ち上げた高崎文子さん(45)は「うまくいかずに取り残されるのは子どもたち。行政や教育委員会がスクールの存在を把握し、互いに連絡を取れる制度があれば」と提案する。
 十年目となる岡崎市の「シードーム」でも持続性は大きなテーマだ。「卒業」に関する規定を作るなど、生徒もスタッフも入れ替わりながら持続できる理念に練り直している。「みんなの学校をみんなでつくる、その面白さを感じてほしい。この場所を大事にしたいという思いがそれぞれにあれば、続いていくはず」と代表の黒柳佐智代さん(44)。その思いに応えるように、生徒たちは日々ミーティングを重ねている。

民間施設を法律で認定

 学問の自由と教育を受ける権利は日本国憲法で保障されている。また、教育基本法第五条(義務教育)によると、保護者は子に普通教育を受けさせる義務を負うが、義務教育の場は認可された学校でなければならないとは記されていない。むしろ第一〇条では、家庭教育における自主性の尊重が掲げられている。
 二〇一六年十二月に成立した教育機会確保法では、不登校の子が通うフリースクールを念頭に、行政が認可する学校に当てはまらない民間の団体や施設も教育の場として公に認められることになった。
 認可外の民間校に通う児童・生徒は、基本的に居住地の公立校に在籍。行事に参加したり、卒業証書を受け取ったりできる。文部科学省は昨年十月、在籍する公立校とのつながりを保っていれば、民間校や家庭での学習でも出席扱いとするよう通知を出した。ただ、実際の対応は各学校によってさまざまだ。

子どもの幸福考え議論を

 <森田次朗・中京大准教授(教育社会学)の話> オルタナティブスクールへのニーズが高まり、増加している背景には、みんなで同じ時間に同じ場所で同じことを学ぶ義務教育が制度疲労を抱え、変容を余儀なくされていることがある。教育機会確保法によって既存の学校以外の学びの場の意義に注目が集まったものの、まだまだ日本では「教育=学校」という意識が強い。オルタナティブ教育的な発想は既存の学校制度の中にも必要で、個々の子どものニーズや幸福の視点から公教育のあり方や、「学校とは何か」が論じられるべきだ。

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