障害者成長の場 苦境 コロナ影響 

2020年10月5日 05時00分 (10月5日 09時49分更新)
作業する利用者を見守る永井出理事長(中)=富山県黒部市吉田のくろべ工房で

作業する利用者を見守る永井出理事長(中)=富山県黒部市吉田のくろべ工房で

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富山県内事業所 収入減、助成受給にも壁


 新型コロナウイルスの感染拡大による地域経済の落ち込みが、障害のある人の就労を支える作業所にも及んでいる。富山県内の運営者は「障害のある人が、人として成長できる場所」と作業所が地域で担う福祉的な役割を訴え、公的な支援の拡充を求めている。(山岸弓華)
 社会福祉法人「くろべ福祉会」(同県黒部市)が運営する就労継続支援B型事業所「くろべ工房」では、知的障害や精神障害がある約二十人が、調理や清掃などの分野で働く。主力事業のパン製造では、地元企業に出向いてパンを外販していたが、感染拡大以降は販売を自粛。このため四〜五月のパンの売り上げはほとんどなかった。ほかにも市役所の食堂でラーメンやそばを提供していたが、外食を控える動きもあり、売り上げが落ち込んだ。
 四〜六月の収入は昨年の同じ時期の半分ほど。材料費などの固定費がかかるため約五百万円の赤字に陥り、職員に今夏のボーナスを支給できなかった。利用者への工賃の支払いは維持するつもりだが、感染の終息は見通せず、売り上げがいつ戻るか先行きは不透明だ。理事長の永井出(いずる)さん(56)は「経営が危うくなれば、利用者にしわ寄せがいく。経営努力にも限界がある」と危機感を募らせる。

運営継続へ「恒常的な補償を」


 国の「生産活動活性化支援事業」では、売り上げが減少した就労継続支援事業所に最大五十万円が支給されるが、要件のハードルが高く、くろべ工房は対象外だった。永井さんは「感染の第三波も予想されるが、これからは自分たちで何とかしていくしかない」と話す。
 休業手当を国が補償する「雇用調整助成金」についても、B型事業所は利用者と雇用契約を結ばないため、利用者を休ませても手当の支給対象とならない。中小法人向けの「持続化給付金」も受給の壁が高く、全国の作業所でつくる「きょうされん」(東京都)によると「受給した所は少ない」のが実態。県の支援金も、国の給付金受給が要件となっているため、支援の手は行き渡っていないとみられる。
 きょうされんが七月に実施したアンケートによると、B型事業所などを含めた全国五百十一の障害福祉事業所のうち、百六十カ所が「収入が回復する見通しが全く持てない」と回答した。多田薫事務局長は「事業が成り立たない所が出てきている。一時的でなく、恒常的な補償が必要だ」と訴えている。

【メモ】就労継続支援事業所=障害者総合支援法に基づき、一般企業で働くことが困難な障害者に、就労に必要な能力を身に付けてもらうことを目的とした施設。雇用契約を結び、最低賃金以上の報酬が支払われるA型と、雇用契約を結ばず、作業に対する成果報酬として工賃が支払われるB型がある。B型事業所は県内に約110カ所あり、平均工賃は2019年で月1万6748円。


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