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<月刊ジブリパーク> パークの設計図(1) 脱「テーマパーク」

2020年10月6日 16時18分 (10月6日 16時18分更新)
 数々の名作アニメーションで世界を魅了してきたスタジオジブリ。その世界観を体験できる「ジブリパーク」が二〇二二年秋、愛知県長久手市の愛・地球博記念公園に開業する。七月末に起工式があり、まずは「青春の丘」「ジブリの大倉庫」「どんどこ森」の三エリアで工事がスタート。残る「もののけの里」「魔女の谷」の二エリアも二三年オープンを目指す。自然の叡智(えいち)をテーマに掲げた〇五年の愛・地球博(愛知万博)の理念を継承しつつ、五感を刺激する仕掛けをちりばめた一大プロジェクトが、いよいよ動き始めた。
 ジブリパークの宮崎吾朗監督(53)は、どのようにして人をわくわくドキドキさせようとしているのか。構想、仕事の流儀などを複数回に分けて紹介する。

宮崎吾朗監督

「らしく」ではなく 本物つくる

 今に至るまで、ジブリ作品のテーマパークをやらないかという話を随分いただきました。そこで思ったのは、どこか現実世界に立脚しているジブリ作品は、テーマパークというものに向かないのでは、ということです。ファンタジーが現実世界にはみ出してきているのが、大きなテーマパーク。それは違うという感覚がいつもありました。
 ジブリが手掛けるなら、違う形でないと難しい。そう考えていたところ、愛知県から愛・地球博記念公園への招致を打診されたわけです。公園には、愛知万博の時に建てた「サツキとメイの家」がある。「となりのトトロ」に登場する建物を昭和初期の工法と材料で大工さんらが忠実に再現したものです。そこに毎年、平均して十万人以上のお客さんが訪れ喜んでくださるのは、かつて見た映画の記憶と自身の体験がミックスされ、新しい体験になるからでは。一見、ただの家ですが、機械仕掛けでバーチャルに見せるより、よほどジブリっぽいことです。
 ジブリパークは「らしく」ではなく、触れて、においをかいでと、全身で感じられる本物の空間を目指します。リアルな体験を楽しめるのは、公園という場所にふさわしい。ですから「ジブリの大倉庫エリア」を除き、ジブリ作品に登場する建物や庭を本物としてつくる計画です。きちんとつくるということは、きちんと手入れさえすれば長持ちするということでもあります。いかに早く安く、一定の耐久性を持たせるかというコスト追求の思想とは、真逆で行きたい。そして、いつか、地元をはじめ公園に憩う人すべての宝物になればうれしく思います。
 僕の仕事って、観察から始まります。今回も理屈を無理やり土地にはめこもうとは思いません。愛知青少年公園が万博会場になり、今また公園として親しまれている。そこに自分の身を置いて見え、感じることを積み重ねて考えています。整備は映画に例えると絵コンテ作成が終わり、いよいよ制作が始まった段階。極力、現場に足を運び関係者と力を合わせていきます。

 みやざき・ごろう 1967年、東京都生まれ。信州大で森林工学を修めた後、建設コンサルタントとして公園緑地、都市緑化などに従事。98年から三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市)の総合デザインに取り組み、初代館長も務めた。愛・地球博では「サツキとメイの家」の設計を統括。2006年公開の「ゲド戦記」でアニメ映画を初監督し、映画「コクリコ坂から」、テレビシリーズ「山賊の娘ローニャ」も手掛けた。今冬、NHK総合で、ジブリ初のフル3DCGアニメ「アーヤと魔女」が放映される。

取材・古谷祥子、谷村卓哉 CG・東茉里奈

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