広がるオルタナティブスクール・前編 理念共感、新たな選択肢

2020年10月1日 05時00分 (10月1日 11時06分更新)
幅広い年齢の子どもたちが集まり、話し合う=愛知県岡崎市の三河サドベリースクール・シードームで

幅広い年齢の子どもたちが集まり、話し合う=愛知県岡崎市の三河サドベリースクール・シードームで

  • 幅広い年齢の子どもたちが集まり、話し合う=愛知県岡崎市の三河サドベリースクール・シードームで
 学校法人として認可されていない民間の教育機関である「オルタナティブスクール(もうひとつの学校)」が増えている。不登校になった後にフリースクールに行くような二次的な選択ではなく、教育方針や理念に共感して通う積極的な選択肢として全国で急速に広がり、愛知・岐阜・静岡の三県ではこの三年間で倍増。その理由とは−。 (宮崎厚志)
 九月七日、岐阜県多治見市内で新たなオルタナティブスクールが産声を上げた。「森のようちえん」と呼ぶ自然の中の自主保育を十年以上行ってきた団体を母体に生まれた「大地組スクール」だ。校舎はフットサルコート併設のカフェを転用。小一から小三まで三人の子どもが入学した。
 「自分のことを自分で決められる小学校をつくってほしい」。きっかけは公立小に通う卒園児からの直訴。代表の元保育士浅井智子さん(52)も「自分で感じて考えて行動する幼児期ならではの純度が、小学校で薄まっていくのがもったいない」と考えていた。沖縄や徳島の幼小接続型のオルタナティブスクールで研修し、約一年で開校した。自主保育の団体スタッフ十人が兼務で運営に携わる。
 既存の小学校を経験せず、オルタナティブスクールを選ぶ新一年生は増えている。本年度、「愛知シュタイナー学園」(愛知県日進市)に十二人、「あいち惟(ゆい)の森」(名古屋市緑区)には六人の新一年生が入学。いずれも二年生以上の一学年の人数を上回る。
 多種多様なオルタナティブスクールの中でも主流派の一つが、生徒による自治が理念の「デモクラティック(民主的な)スクール」だ。米マサチューセッツ州にある「サドベリーバレースクール」に端を発し、世界中に拡大。日本でも現在十校以上がある。
 その一つが愛知県岡崎市の「三河サドベリースクール・シードーム」。九月現在、四軒の民家をつなげた校舎に七〜十七歳の児童・生徒二十七人と四人のスタッフが集う。
 シードームに授業はない。おしゃべりに花を咲かす子もいれば、個人で学習する子、作曲やダンス、映像制作に励む子も。漫画やゲームもOKだ。適度な距離感で互いの自由と責任を尊重する、おおらかな時間が流れていた。
 一カ所に集まるのはミーティングの時間。ルールやイベントの相談はもちろんスタッフの人事や予算まで、スクールに関する全てに生徒は議決権を持つ。学校運営自体が壮大なプロジェクト型学習だ。
 小中学校には通わずシードームで育った黒柳明里(あかり)さん(16)は「コロナで失業者が増える中、学校で習うことよりも今後の役に立ちそうなことを勉強したい」。大人に交ざって経営者向けのセミナーなどに参加しているという。「いわゆる『普通』と違うことへの葛藤も、将来への不安もないですね」。視線も発言も、よどみがなかった。 (後編は八日付に掲載)

 オルタナティブスクール 広義では、既存の伝統的な学校の枠組みにとらわれず、行政の認可の対象外となる学校の総称。日本では近年、不登校の子の居場所として必要とされるフリースクールと分けて考え、理念や教育方法の違いにより選ばれるスクールが狭義のオルタナティブスクールと呼ばれる。ただ、不登校になった後でオルタナティブスクールを選ぶ生徒も多い。運営主体は社団法人やNPO法人、個人など。スタッフの教員免許は不要だが、持っている場合もある。


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