(59)「意思決定の尊重」 一緒に考えることから

2020年9月29日 05時00分 (9月30日 12時38分更新)
 先週、愛知県尾張旭市で障害者福祉のNPO法人ピース・トレランスの代表をされている押富俊恵さん(39)の講演を拝聴しました。

講演を終えた押富俊恵さん(左)と=名古屋市中村区で


 作業療法士でもある押富さんは、二十四歳の時に重症筋無力症という難病を発症。在宅療養を続けつつ、地域の人たちとさまざまな活動をされています。
 電動車いすに人工呼吸器。気管切開して、お話をするのは難しいはずなのに、押富さんは一時間半の講演と質疑応答を、疲れも見せずにこなしました。
 演題は「意思決定を支援すること」。押富さんは、うどんが大好きで昼食によく食べるのですが、家に来る複数の事業所のヘルパーさんが作ってくれるうどんは、なぜかいつもぬるい。不思議に思って聞いてみたら、人工呼吸器を使う押富さんは、熱いものを口でフーフーと冷ますことができないので、やけど防止のために配慮してくれて、それが申し送り事項になっていたそう。でも、「私は熱々のほうが好き。意向を聞いてほしかった」。
 そうした例を挙げながら「相手のためにと思ってする配慮が、当事者の思いとずれてしまうことがある」と指摘し「私が求めるのは質の高いケアではなく、自分のやりたいことを応援してくれるケア」と訴えました。
 配慮とは、支援者や家族が「こうしたらいいだろう」と行うのではなく、本人と一緒に話し合い、考えて、つくり上げていくものだと改めて感じました。私たちがん患者も、抱えている悩みはそれぞれに違うので、どうすればお互い心地よく過ごせるのか、一緒に考えることが重要。対応に迷ったら「どうしたらいい?」と率直に聞いてほしい。それが、配慮の第一歩であり、意思決定の尊重につながっていくのだと思います。
 押富さんは、私が昨年出版した本に、リハビリの専門家として、障害のある当事者としてすてきな感想をメールしてくださり、お目にかかれるのを楽しみにしていました。
 気管切開していてもお話ができるのは、自己流で訓練を続けるうちにコツをつかんだからとか。舌のない私が普通の食事を取れるようになったのと同様に、医学の教科書には載っていない経験をされてきたようです。今度お会いするときには、そんな「規格外」のお話をたくさんしたいなと思っています。
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 あらい・りな 1974年生まれ。岐阜県在住。2015年に腺様嚢胞(のうほう)がん(ACC)で舌を切除。闘病とリハビリを続けている。

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