江戸和竿師「竿ます」初めての実演 師匠から受け継ぐ技と心意気

2020年9月29日 05時00分

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渾身の出来のマブナ竿を手にする竿ます

渾身の出来のマブナ竿を手にする竿ます

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 江東区大島の「中川船番所資料館」で22日、若き江戸和竿師が初めての実演を行った。栃木県鹿沼市に工房を構える増形智志さん(43)だ。増形さんが和竿職人「竿ます」として独立したのは34歳。和竿師の家に生まれたわけではないゆえ、そこに行き着くまでの道のりは決して平たんではなかったという。何でもスピーディーに電子化される現代において、あえて全ての工程が手仕事になる苦労の多い世界に飛び込んだ増形さんを取材した。 (仲田美歩)
 実演当日、開始時間の午後1時前には和竿愛好者とおぼしき聴講者が続々と集まり、今か今かと待ち構えている。
 「初めてのことなので緊張しています。たわいもない話をしながら作業を進めていきますので、質問などありましたら、お声掛けください」と竿ますのあいさつで実演がスタート。布袋(ほてい)竹を取り出し「芽取り」と呼ばれる下仕事に取り掛かる。
 座席の一番前の端には、その姿をじっと見つめる師匠、竿しば親方(芝崎稔)の姿があった。葛飾区新小岩の「竿しば釣具店」店主でもある。やがて竿ますは和竿師を目指すきっかけを作業を進めながら語りだした。
 栃木県さくら市(当時は塩谷郡氏家町)に生まれた竿ます。幼いころから、釣り好きだった父親に連れられ鬼怒川で清流釣りを楽しんだ。やがて大学に進学、2年生になると初めて将来について真剣に考えた。
 「このまま会社員になるのはどうなんだ…」と疑問に思い、そこで気付いたのが、自分は物作りが好きだということ。そして「職人になろう!」と決心。いろんな本を読み、和竿師という仕事があることを知る。「芸術の枠まで美しく仕上げられる竿…こんな世界があるんだ」と深く興味を持つ。その後、大学は中退、運送業で生計を立てていた。そんな日々の中、釣り専門誌「つり人」に掲載された和竿職人の特集に触れ、本格的に和竿師を目指すことに。その後、ある竿師の元に2年通ったが、辞めてしまう。

◆職人になりたい一心 師匠の心動かす

 それから3年後、フィッシングショーで竿しばと運命の出会いが。直観的に「この人なら、間違いない」と感じたという。それからは弟子を何度も志願するも「食べていける保証がない」と、そのたびに断られていた。それでも熱心に通い続け、最終的には竿しばが折れた。
 「いつのまにか、こうなっちゃって…」と竿しばは笑う。そして「彼は仕事熱心で丁寧」と褒める。「弟子と言ってくれるようになったのはここ数年です」と竿ます。穏やかな口調で優しげな印象の竿ますだが、実は粘り強さと折れない心の持ち主のようだ。
 「親方がよく言うのは『職人は死ぬまで勉強、お客さまに育てていただく』。本当にその通りでお客さまに教えていただくことが多いです」

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