東京2020組織委員会 天野春果さん(「新聞社の事業担当」関連)

2020年10月3日 00時02分 (10月6日 12時22分更新)
 いよいよ近づいてきた東京五輪・パラリンピック。日本で五十六年ぶりとなるスポーツの祭典の準備・運営を担うのが「東京2020組織委員会」です。事前の盛り上げや大会を身近に感じてもらうための企画をするイノベーション推進室の天野春果さん(48)を、中学生記者が取材しました。

天野春果さんを取材する中学生記者たち=東京都中央区の東京2020組織委オフィスで

企画で五輪・パラ身近に

 記者たちが向かったのは東京大の研究室。天野さんが企画した人気アニメ「機動戦士ガンダム」の模型を載せた人工衛星のモデルがありました。実物は三月に打ち上げられ、大会に向けた応援メッセージを宇宙空間で表示。それをカメラで撮影し、地球に送る計画です。
 「最初は五輪の象徴である白いハトを宇宙で飛ばしたいと思った。だけど、ハトでは誰も協力してくれなくて」と笑った天野さん。何か別の白いもので、日本らしさを表現できるのは…と、雑談していた時、アイデアが生まれたそうです。
 ガンダムの宿敵、シャア専用ザクを寄り添わせることで、五輪の目的である世界平和も表現。その構想に宇宙航空研究開発機構や東京大の教授、玩具メーカーなどが賛同し、宇宙に飛び立つ初めてのガンダムが誕生しました。

人工衛星に搭載されるガンダムとシャア専用ザクの模型。目の色が五輪シンボルマークの5色に変わる=東京都文京区の東京大で


 約三千二百人が働く組織委で「おもしろいこと」を考えて大会を盛り上げるのが天野さんの仕事。「みんなの一生の思い出になる大会にしたい」。最初に取り組んだのは五輪・パラの全五十五競技のルールや魅力を知ってもらうための算数ドリルを作ることでした。
 ところが組織委内からは「これは教材です。どこがイノベーションなのか」と厳しい声。国際オリンピック委員会)からも「オリンピアンにおもしろおかしいポーズを取らせてはいけない」と修正を求められました。「不眠症になり、メールを見るのが怖くなった」と追い詰められた天野さん。しかし、心は折れませんでした。

東京2020算数ドリル。五輪版とパラ版がある

 スポーツと学習を掛け合わせることの意義や、パラ競技に興味を持ってもらう大切さを訴え続けました。今では東京以外の五つの自治体でもドリルを採用。他にも、日本の銭湯文化を伝える企画や、NHKの人気番組でパラアスリートを起用してもらう提案などを、次々と実現させました。

原動力は出会いの喜び

 天野さんは二十四年前、留学先のアメリカで開かれたアトランタ大会でボランティア活動に参加。多くの人と出会い、協力した経験と喜びが、今も原動力です。七年前に東京開催が決まった瞬間には「絶対に組織委で働く」と決意。再び多様な経験や能力を持つ人たちと力を合わせています。
 「組織委に入って一番良かったのは、すごい人たちに会えて、厳しい挑戦ができたこと。大人になってもまだまだ成長するし、もっともっと大きなことができる」。天野さんの言葉に刺激を受けた記者たちも、大会の成功を祈りました。・宮崎厚志)

天野さんの案内で建設中の選手村を外から見学する中学生記者たち=東京都中央区の晴海客船ターミナルで

    ◇

この道を目指す君へ


 厳しい環境を選んで働くことは、自分を成長させるために必要だと思います。目的と手段を取り違えないことが大事。僕の場合、組織委にいることは手段で、大会を盛り上げることが目的。だから何を言われても、正しいと思うことはやります。
    ◇

これまでの歩み


1991年 東京都立の高校を卒業し、アメリカのワシントン州立大に留学
  96年 アメリカのアトランタ五輪・パラにボランティアとして参加
  97年 サッカー・Jリーグの川崎フロンターレに入社
  98年 長野冬季五輪でバイアスロンの競技役員を務める
2017年 東京2020組織委に出向
<2020年2月29日紙面掲載>

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