リニア工事 ヤマトイワナすみか守って

2020年9月27日 05時00分 (9月27日 05時02分更新)
 リニア中央新幹線南アルプストンネル(静岡市葵区)工事を巡り、JR東海は工事現場周辺の地下水位は最大で三百メートル超、下がるとの試算を公表し、沢枯れや生態系への影響が懸念されている。大井川の上流には「大井川のシンボル」とされる絶滅危惧種、ヤマトイワナ=写真、静岡市提供=が生息している。 (広田和也)
 県レッドデータブックなどによると、サケ科で、イワナの日本固有の亜種の一つ。体長は二〇〜三〇センチほどで、富士川や相模川、紀伊半島などの冷涼な源流域に分布する。県内では大井川と天竜川の上流に生息するとされる。他のイワナに共通する背中の白い斑点がないのが特徴で、側部に赤い斑点があるヤマトイワナも確認されている。
 工事現場に近い井川地区(同)で生まれ育ち、ヤマトイワナを見守ってきた岡本初生さん(83)によると、とんがった口先で、主食の昆虫や、サンショウウオを好んで食べる。大井川上流にはかつて大量に生息していた。
 平成に入って、ダム開発による大井川の流量減少や乱獲、釣り人が放流した別の亜種のニッコウイワナとの交雑が進み、激減した。県のレッドデータブックでは、最も絶滅する可能性が高い「絶滅危惧1(ローマ数字の1)A類」に指定され、「幻の魚」と神格化されるほどだ。
 JR東海が二〇一四年に公表した環境影響評価(アセスメント)における調査結果によると、ヤマトイワナは見つからず、一五年、二〇年の調査でも確認されていない。
 静岡市が一八年度に実施した環境調査では、捕獲したイワナ九十六匹のうち、二十六匹がDNA検査の結果、ヤマトイワナ(ほぼ確定を含む)と分かった。残りの大半はニッコウイワナか、ニッコウとヤマトの交雑種だった。

◆専門家「南アルプスの生態系体現」

 三千メートル級の山々に囲まれた大井川上流に、なぜヤマトイワナが生息しているのか。県内水面漁業協同組合連合会の川嶋尚正専務理事によると、イワナは、人類が石器を使い始めた二百五十万年前にヤマトイワナ、ニッコウイワナ、アメマス、ゴギの四亜種に分化した。
 それぞれが生息域を広げていく中、百万年前に南アルプスが急激な隆起をしたため、ヤマトイワナの一部が大井川上流に取り残されたと推測している。
 JRの試算通りなら、リニア工事で上流の沢の流量は最大七割減る。ヤマトイワナがいる沢が枯れたり、流量が減ったりする可能性がある。川嶋専務理事は「南アルプスの生態系を伝える貴重な魚。生物多様性の観点からも、純粋種の遺伝子は残さないといけない」と指摘している。

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