「はりぼて」議会だけか 富山市議らの不正描く ドキュメンタリー映画

2020年9月26日 05時00分 (9月26日 11時09分更新)
映画「はりぼて」について語る五百旗頭幸男監督(右)と砂沢智史監督=金沢市内で

映画「はりぼて」について語る五百旗頭幸男監督(右)と砂沢智史監督=金沢市内で

  • 映画「はりぼて」について語る五百旗頭幸男監督(右)と砂沢智史監督=金沢市内で
 富山市議会で二〇一六年に発覚した政務活動費の不正を追ったチューリップテレビ(富山市)制作のドキュメンタリー映画「はりぼて」が全国公開されて話題を呼んでいる。記者たちの追求に「問題ない」とうそぶく市議たちの不正が次々に暴かれる様子がコミカルに描かれ笑いを誘うが、痛快さの一方で「はりぼて」なのは議会だけではないことにも鋭く目を向ける。(松岡等)
 監督はキャスターも務めた五百旗頭(いおきべ)幸男(42)と、営業畑を長く勤めた後に報道部門に配属された砂沢智史(40)の両記者。市議会が議員報酬を六十万円から一気に七十万円へと引き上げようとする条例案をきっかけに情報公開請求を駆使して政活費を調べ、市議たちの不正を暴いていく。取材をのらりくらりとかわす市議たち。やがて追い詰められると涙を流して謝罪する姿が滑稽でさえある。
 重鎮市議の一人が、不正に取得した政活費の使途を問われ、涙ながらに「酒が好きなもので」と話すシーンは、一連の事件の中でも象徴的な場面の一つ。しかしその表情はいかにも人間くさい。五百旗頭さんは「市議や職員らの表情だったり、間の取り方だったり、目の動きだったり、ニュースではカットされがちなところに本質が表れる。市議たちは悪いことはしていてもどこか憎めない人たち。同じ立場だったらやってしまうかもしれない。そんな人間の弱さを描きたかった」という。

◎日本の縮図


 「政治への無関心やこんなものだというあきらめが日本でいろんな問題を引き起こしている。富山のことは日本の縮図」と五百旗頭さん。砂沢さんは「市民が議会に関心を持って見ていれば、そうそう悪いことは心情的にも起きないはず。無関心からそれを許してきた市民も、力不足なメディアも含めて『はりぼて』」と、映画に込めた思いを語る。

◎組織と葛藤


 富山県内では後発で、社員数も少ない民放ローカル局が放ったスクープから始まった報道は、四十人の市議のうち十四人のドミノ辞職につながった。「質問すれば周囲から浮いたり、孤立したりすることはあるが、それを恐れてはいけない。地方でも、中央でもそれは同じでは」と五百旗頭さん。一方の砂沢さんは「自分が住む街で疑問に思ったことを調べられるというのは、ローカル局の強み」と話した。
 しかし五百旗頭さんは「メディアも正義のヒーローではない」とも。映画のラストでカメラが捉えるのは意外にも両監督のその後だ。砂沢さんは人事異動で報道部門を離れ、五百旗頭さんは同僚たちが集まる中で自身の退職を告げるが、局内で何が起きていたのか映画はそれを明確にしてはいない。「組織ジャーナリズムの葛藤を描き、見た人に考えてもらいたかった」という一方、「映画で描けなかったものがあるのも事実。その意味では僕らも『はりぼて』」。五百旗頭さんは今、石川テレビ放送に移り、ドキュメンタリー制作を続けている。

金沢・シネモンド上映中 富山・ほとり座来月から


 「はりぼて」は全国約五十館で順次公開予定。上映中の金沢市のシネモンドでは十月九日まで、富山市のほとり座では十月三十一日から上映される。

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