隆の勝があまりにも素晴らしかった…照ノ富士を推した舞の海君、言い訳が気の毒に見えました【北の富士コラム】

2020年9月22日 21時46分

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隆の勝(右)が寄り切りで照ノ富士を破る

隆の勝(右)が寄り切りで照ノ富士を破る

  • 隆の勝(右)が寄り切りで照ノ富士を破る
◇22日 大相撲秋場所10日目(両国国技館)
 2敗組の一角が崩れた10日目の土俵であった。テレビ解説の舞の海君が、優勝に一番近い力士と力強く断言した照ノ富士が敗れた。
 私はテレビ観戦で、下手をすれば隆の勝に押されると予想していました。証人もいます。八角部屋の若い力士です。その通りになったので、私を尊敬の目で見ていました。一方、舞の海君は言い訳がましいがと言いつつ「どうやら膝に疲れが出てきたようです」と言い訳をして、気の毒に見えました。
 確かに照ノ富士の立ち合いは、いつもより幾分高かったと思います。右足の踏み込みも浅かったようです。それよりも、隆の勝があまりにも素晴らしかったとしか言いようがありません。
 左のおっつけが、照ノ富士の右肘を下から持ち上げるように絞り上げ、右の差し手を完璧に返し休まず前に出る。左の攻め、右かいなの返し、寄る時の体勢の低さ、そして土俵際の見事な詰め。どれを取っても非の打ちどころがありません。
 私も現役で何百番も相撲を取ってますが、これほど完璧な相撲は取ったことも見たこともありません。負けた照ノ富士もあまりの完敗を認めるしかないと思います。
 同じ部屋に大関貴景勝がいますが、押し相撲の完成度では隆の勝が上でしょう。もう少し褒めてもいいでしょうか。私は隆の勝の作戦的立ち合いの変化や引き技を見たことがありません。見事な力士です。こんな人にこそ大関、横綱になってもらいたいものです。この一番で私は満足です。
 正代も気迫を見せて照強をねじ伏せた。明らかに優勝を狙う気力を感じさせた一番でした。貴景勝も調子を上げてきたようである。
 残念だったのは朝乃山の相撲が見られなかったこと。お客さんに申し訳ないです。これで今場所2度目の不戦勝。運が上向いてきたのだろうが、お客さんはたまったものではない。
 午前中の早いうちなら、割は返せないのだろうか。全部割を返せとは言わない。ほんの2、3番いじれば簡単に取組は作れるだろうに。私も審判部に長くいたので、割り返しが大変なのは分かるが、やってできないことはないはずだ。もっとファンのことを考えても良いではないか。朝乃山だって7勝のうち、不戦勝が2度もあってはうれしくないだろう。
 元気いっぱいだった霧馬山も休場。2横綱の全休や豊山の休場、琴奨菊の再出場等々、それほどの激しい相撲でもないのに、けが人続出である。けがだけは仕様がないと片付けてはいけない問題である。
 玉鷲はあれだけ激しい相撲を取っても休場はしない。決して悪いところがない訳がないだろう。不肖私めも三段目のころ、急性腹膜炎で1場所休んでいるがそれ以降、横綱になるまでは休場はない。先日ラジオでマラソンの高橋尚子さんの話を聞いたが、彼女は現役のころ、朝起きて50キロ走り腹筋1000回、朝食後また数10キロ走る毎日だったと語っている。それに比べ、力士の稽古量のいかに少ないことか。昔は各スポーツの関係者や若手が稽古を見学に来たり、まわしを着けて稽古をすることがありました。
 時折、千代の富士と北勝海のぶつかり稽古を見ることがあります。あれだって昔は、特別すごいことではなかったのです。今の稽古が少なすぎることに尽きるということです。中には、厳しい稽古をしている部屋もあることも知っています。十分に稽古さえしていたなら、自然とけがも少なくなるでしょう。あと何年相撲を見られるかわかりませんが、先の事を考えると心配でなりません。
 やっぱり今日もグチで終わってしまった。発見。グチった後は食欲がわかないと見える。期限切れ寸前のラーメンでも食うとしよう。
(元横綱)
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