米津の浜の雨乞い 厳しい日照り 秘伝のお経1週間

2020年9月19日 05時00分 (9月19日 05時00分更新)
和尚様が雨乞いのために1週間こもったと伝わる宗安寺

和尚様が雨乞いのために1週間こもったと伝わる宗安寺

  • 和尚様が雨乞いのために1週間こもったと伝わる宗安寺
 今から200年ほど前のある年のことです。
 春から晴れる日が続き、雨が降らないまま夏を迎えました。例年に比べて暑さがことのほか厳しく、一滴の雨も降らないひどい日照りが続きました。
 「ここまで雨が降らないと、農作業はお手上げだ」
 「せっかく植えた稲も、実る前に枯れてしまう」
 「年貢を納めるどころか、みんな飢え死にだ」
 市野村(今の浜松市東区市野町)の人々は、困り果ててしまいました。
 「宗安寺(同町)の和尚様なら、良い知恵があるのでは」
 「雨乞いのお経でもあれば、何とかなるかも」
 村人は、さっそく宗安寺にお願いに行きました。
 事情を聴いた和尚様は、空を見上げた後、村人を見渡して語りかけました。
 「秘伝の雨乞いのお経はあるが、効き目は絶大で大雨になってしまうかもしれない。ひどい日照りを補う雨が一気に降れば洪水が起きる心配もある。それでもよろしいか」
 村人は枯れ始めた稲を思うと、雨の量など問題ではありません。とにかく一刻も早く雨を降らせてほしいと、口々に頼みました。
 和尚様は、村人の強い思いを確かめると、今日から1週間、寺にこもって雨乞いのお経を唱えることを伝えました。
 この日から、寺の周りには和尚様が唱えるお経が休むことなく響き渡りました。村人は、寺に向かって手を合わせつつ、雲一つない空を見つめました。
 「和尚様は、あれからずっとお経を唱えている。どうか願いが天に届いてくれ」
 「もうすぐ1週間がたつ。一粒の雨も降らないが、本当に大丈夫だろうか」

◆仕上げに海の竜神に祈り

 満願の7日目、寺の戸が開くと、和尚様が村人の前で笑みを浮かべました。
 「皆さん、お約束の1週間が過ぎました。雨乞い祈願の仕上げに、最後のお経を米津の浜(今の浜松市南区米津町の辺り)で唱えるので、ご一緒にどうぞ」
 米津の浜に着くと、和尚様は海の竜神に向かって一心に祈りました。すると、青空が一気に曇りだし、豪雨になりました。待ちわびた雨に大喜びしながらも、全員ずぶぬれになってしまいました。
 「寺から持ってきた長持ちを開けてくだされ」
 和尚様に言われた村人が長持ちのふたを開けると、笠などの雨具がぎっしり詰まっていました。
 雨の中を家路につく村人の前に、水浸しになった田んぼが、どこまでも広がっていました。

<もっと知りたい人へ>
参考文献:「続 遠州伝説集」御手洗清


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