(58)「月を撮る」 仲間とのつながり実感

2020年9月15日 05時00分 (9月15日 11時19分更新)
4年前、熊本旅行で渡辺さゆりさん(左)と。13日が一周忌でした=熊本市の水前寺公園で

4年前、熊本旅行で渡辺さゆりさん(左)と。13日が一周忌でした=熊本市の水前寺公園で

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 春からのコロナ禍で、一人で過ごす時間が増える中、月の撮影が新しい趣味になりました。
 晴れた夜は、アパートの窓からカメラを構えたり、外に出てよく見える場所を探したりします。がん友達から撮影方法を教わり、デジタルカメラの感度や絞り、シャッタースピードなどをいろいろ試すうち、自分なりに納得できる写真も撮れるようになりました。今、抗がん剤治療の影響で、体のだるさなどの副作用があるのですが、撮影している間はそれを忘れるほど夢中になっています。
 実は、少し前までは月を見るとつらい気持ちがわき起こっていました。
 わが同志・渡辺さゆりさん(長野県飯田市)が旅立ったのが、ちょうど一年前。中秋の名月の夜だったのです。五年前、愛知県がんセンターの病棟で出会って以来、たくさんのことを教わり、生きる楽しさを共有してきた仲間でした。覚悟はしていたつもりだったけれど、さゆりさんがいない現実を受け止められませんでした。彼女は全力で生き切ったのだから、私が泣いちゃいけないという思いが常にあり、悲しみをずっと抱えていました。
 そんな中、月の写真をSNSに投稿していたがん友達から「里奈ちゃんもやってみない?」と誘われました。「きっとさゆりさんも月から見てるよ。きれいに撮ってあげようよ」と。
 温かい励ましを受けて始めてみたら、本当におもしろい。手術の影響で上を向くことが難しくなった私には、いいリハビリにもなります。この趣味、室内や近所で撮影できて、体の負担が少ないうえ、つながりを感じられるのが魅力です。仲間たちが、別々の場所から同じ月を見ている。なかなか会えなくなったけれど、気持ちはこうしてつながっていると思えるのです。
 さゆりさんを亡くした悲しみは今も薄らいではいませんが、つらい時はわーっと声を上げて泣けるようになりました。うまく泣けるって、とても大事なことだと感じています。
 今は、カメラのファインダー越しに月を眺めては、さゆりさんに「楽しくやっている? 聴いてほしいことがいろいろあってさ」などと、ゆっくりと語りかけるような感覚でシャッターを押しています。今年の中秋の名月は十月一日。晴れますように。

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