菅総裁誕生、県内経済の課題は 恒友仁・静岡経済研常務理事に聞く

2020年9月15日 05時00分 (9月15日 11時15分更新)
菅義偉氏の政策と県内経済について語る恒友仁常務理事=静岡市葵区で

菅義偉氏の政策と県内経済について語る恒友仁常務理事=静岡市葵区で

  • 菅義偉氏の政策と県内経済について語る恒友仁常務理事=静岡市葵区で
 安倍晋三首相の後任となる自民党新総裁に、経済政策「アベノミクス」を継承する菅義偉氏が決まった。静岡経済研究所の恒友仁常務理事(54)は、新型コロナウイルス感染拡大で苦境にある県内の観光業や飲食業を念頭に、落ち込んだ消費の喚起に最優先で取り組むべきだと指摘。感染の収束後は、アベノミクスの恩恵が薄かった中小企業や家計が効果を実感できる政策が必要だと強調した。 (聞き手・伊東浩一)
 −菅政権の誕生で県内経済はどうなる。
 新政権になっても、感染拡大抑止と経済の立て直しが最優先であることに変わりはない。コロナの不安が沈静化するまでは、追加の景気対策が講じられるだろう。安倍政権の路線から大きく軌道修正するものではない。
 −コロナ禍の今、最優先で必要な対策は。
 一番困っているのは消費の落ち込みだ。県内で特に痛んでいる観光業や飲食業を中心に、幅広い消費喚起策に期待したい。人や物の流れなどがニューノーマル(新常態)へ移行する中、業種によってはビジネスのやり方を大きく変えなければならず、変化に対応するための継続的なサポートも求められる。
 −そもそもアベノミクスは県内経済に効果をもたらしたのか。
 前半は、円安株高への誘導で輸出型産業が多い県内経済は持ち上がった。訪日客誘致の推進で観光業も利益を享受した。ただ、恩恵があったのは大企業が中心で、中小企業や小規模事業者まで行き渡っていない部分があるのは確か。有効求人倍率は上がったが、実質賃金は下がった。所得格差の解消はコロナの収束後、新政権が取り組むべき課題の一つだ。小規模事業者や個人も(効果を)実感できる成長戦略を考えないといけない。
 −菅氏はデジタル庁の新設を表明し、地銀再編にも前向きだ。注目する政策は。
 コロナ禍で行政手続きのオンライン化の未整備が顕在化するなど、日本のデジタル化の世界的な遅れが露呈した。以前から日本経済の成長は横ばいで、資本や労働力に伸びる余地が少ない中、生産性向上が成長の鍵を握っており、デジタル化を後押しする姿勢は悪くない。県内は製造業の比率が高く、ITを活用したテレワークを導入しにくい面もあったが、コロナ禍を教訓に(デジタル化を)頭の中に入れておく必要がある。
 −菅氏は感染対策と経済活動の両立を図るとしているが、簡単ではない。
 ウイルスを百パーセント封じ込めるのは困難で、経済との両立が難しいことは確かだ。しかし、感染を防ぐ取り組みは日常生活に浸透しており、検査や医療体制を整備することによって感染リスクを極小化すれば、経済活性化を徐々に進めることは可能だと思う。
 不安がまん延する中で経済を回していくには、政府の一本筋が通った方針や、感染者の発生情報を正確・迅速に知ることができるようにする必要がある。今後、新型コロナとインフルエンザのツインデミック(同時流行)が起これば、経済は振り出しに戻るどころか、底割れする恐れもある。一人一人が感染リスクに対する意識を高いレベルで持ち続けることも大事だ。

 つねとも・ひとし 慶応大経済学部卒。1989年静岡銀行。証券投資グループ長、資金為替グループ長、資金証券部長などを経て2018年静岡経済研究所特任部長に就任。今年6月から現職。専門は内外経済全般、金融市場、企業コンプライアンス。


関連キーワード

PR情報

静岡けいざいの最新ニュース

記事一覧