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ハンド日本一のポストへ 大同特殊鋼・加藤嵩士の復活劇

2018年11月21日 02時00分

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力強いシュートを放つ大同特殊鋼の加藤嵩士=名古屋市南区で

力強いシュートを放つ大同特殊鋼の加藤嵩士=名古屋市南区で

 ハンドボール日本リーグ男子で史上最速の400勝を達成した名古屋市南区を拠点とする強豪・大同特殊鋼の主将に、今季、ポストの加藤嵩士(29)が就任した。首のヘルニアという選手生命の危機を乗り越え、チームの愛称・フェニックス(不死鳥)さながらに復活した。プレーできなかった1年間の分も、恩返しの思いを胸に、チームをけん引する。
 攻守で接触プレーが多く、体の強さが求められるポストの位置で、加藤の表情は生き生きとしている。「1年間プレーできなかった自分を置いてくれて、チームから離さないように、まだ復帰できていない時に主将に指名してくれた」。加藤の中にあふれる気持ちは喜びより、岸川英誉監督(34)や支えてくれたチームメートへの感謝だ。
 もうハンドボールはできないかもしれないと覚悟した。首のヘルニアの症状は以前からあったが、昨年5月の社会人選手権後にピークに達した。6月から2カ月の絶対安静。8月からリハビリを始め、症状が出なくなったが、検査をすると完治には程遠い状態だった。11月、手術をするかどうかと検査入院し、もう一度、3カ月の絶対安静で様子を見ると決めた。
 「賭けだった」。とにかく動かないようにした。104キロの体重は90キロを切った。ことし2月、祈るような気持ちで磁気共鳴画像装置(MRI)検査を受けると奇跡的に回復していた。担当医は驚きながらも、復帰にゴーサインを出したという。3月から本格的なリハビリに入った。チーム練習に合流したのは7月下旬。9月22日の日本リーグ開幕に間に合った。
 ただ加藤の復活劇はこれで終わりではない。チームには韓国代表ポスト、35歳の朴重奎(パク・ジュンギュ)がいる。加藤は「いつまでもジュンギュさんの2番手で、ポイントだけ出ているようではダメ。先発でチームを引っ張りたい」と朴を上回る存在感を目指す。
 ポストは得点を量産するポジションではないが、重要な役割がある。「敵に囲まれたポストへのラストパスはリスクがある。ボールをもらうには信頼が必要。そこで取った1点は流れを変える得点になる」。加藤はチームのために、敵味方が密集する前線で体を張り続ける。開幕から2カ月、徐々に出場時間も増えている。チームを勝たせる存在になれば、昨年1月の世界選手権以来の日本代表復帰も見えてくる。
 「日本一のポストになって、チームの4年ぶりの優勝に貢献する。そして2020年東京五輪で日本代表に返り咲く」。この目標を実現したとき、加藤の不死鳥伝説が完成する。 (伊東朋子)

<記者こぼれ話>

 初めて加藤と面と向かって話したのは、2016年のプレーオフ前だったと記憶している。それまでは試合でしか見たことがなかった。ゴールへ向かって反転シュートを放つときの鬼の形相のイメージが強く、正直に言うと怖かった。ところがコート外の加藤は物腰の柔らかい応対と、「いつも来ていただいてありがとうございます」という人懐っこい笑顔。私を含め、そのギャップにノックアウトされるファンも多いと思います。
 加藤は自身のポジションであるポストを「縁の下の力持ち」と表現してくれた。確かに、体を張り続けても、華やかさに欠ける感はある。ただ辛かったであろうリハビリのことは淡々としか語らないのに、「岸川監督には感謝しかない」、「試合に出られない間もチームメートの藤江がチームをまとめてくれた」と周囲への感謝は熱く語る。そんな彼こそが縁の下の力持ちでしょう。
 そんな彼は、昨年結婚したばかりの新婚さん。「彼女とは一度は転校して離れてしまったんですが、また再会して…。あ、なれ初めまで話してしまった」と教えてくれた表情は見ているだけでほほえましかった。「高いところのものを取ってくれる」とか、「重いものを持ってくれる」とか打算的なこと(すいません、こんなことしか浮かばなくて)ではなく、真の意味で包容力があって、男性としても魅力的なんですね。奥さまにも、多数いる応援してくれている人たちにも、東京五輪で輝く姿を見せてくれるに違いない。
 ▼加藤嵩士(かとう・たかし) 1989(平成元)年10月30日生まれ、愛知県東海市出身の29歳。187センチ、104キロ、右利き。ポジションはポスト。愛知・横須賀中の部活でハンドボールを始める。愛知高-愛大。ハンドボールでは無名の同大2年で、ポストでは異例の東海リーグ得点王となり、4年の2011年から大同特殊鋼の内定選手として日本リーグでプレーし、12年入社。同年12月、日本代表に初選出。13年、日本リーグのベストセブン賞に選出された。

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