地元の懸念、丁寧に議論 国交省・上原鉄道局長に聞く

2020年9月12日 05時00分 (9月12日 10時16分更新)
 リニア中央新幹線の南アルプストンネル(静岡市葵区)工事を巡り、七月に就任した国土交通省の上原淳・鉄道局長は十一日、都内で本紙のインタビューに応じた。大井川の流量減少問題を中心に議論している国交省・有識者会議は「スケジュールありきではない。国交省として拙速に会議を進めることはせず、地元の懸念に寄り添い、丁寧な議論をしたい」と強調した。 (大杉はるか)
 川勝平太知事は会議が全面公開されないことなどに不信感を募らせ、有識者会議で結論が出ても、県の有識者会議や地元が了承しない限り、有効ではないとの考えを示している。上原局長は「今後の進め方で(県側と)何らかの形で合意している事実はない。国交省・有識者会議がまず結論を出し、分かりやすく説明して地元の理解を促進することが先決」と述べた。県・有識者会議で再び協議されることへの言及はなかった。
 県は、国交省・有識者会議が七月中旬の第四回会合で「中下流域の地下水への影響は軽微」とまとめに入る根拠になったJR東海の「水収支解析」を全面的に否定している。上原局長は「(現状の解析の説明だけでは)不十分という認識に基づき、現在議論されている。科学的に妥当性のあるアプローチの仕方で(工事の影響を)評価することが必要」と語った。
 有識者会議は四月以降、会合を五回開いた。委員は追加のデータ提出や工法などの再検討をJRに求め、結論を出せるめどは立っていない。上原局長は「会議はJRの主張を追認するためにやっているわけではない。謙虚な姿勢で、不安や誤解を招くことのないよう、丁寧に地元の方々と意思疎通を図ってもらいたい」とJRに注文をつけた。知事が求める全面公開は「委員の意見も配慮している」と話し、委員全員の了解が必要との認識を示した。
 

◆環境保全、安全が前提

 上原鉄道局長との一問一答は次の通り。
 −二〇一四年に国交相が着工を認可し、はや六年。
 国交相からJR東海には地域の理解と協力を得ること、環境保全措置、安全で確実な施工を求めている。国交省はJRを指導監督してきた立場。リニアを早急に実現することと、工事に伴う環境影響への回避・低減を両立させないといけない。
 −国交省が県、JRの間に入り、有識者会議を発足させた。
 JRが示した水収支解析モデルの精度は、県の専門部会や地元の理解、納得が得られていない。本当に科学的、妥当性のあるアプローチで水資源などへの影響を評価することが必要だ。
 −県は有識者会議の結論を持ち帰って、再度、議論するとしている。
 今後の進め方で何らかの合意をしている事実はない。有識者会議の結論を出すことが先決。スケジュールありきではない。
 −全面公開しないのか。
 当初、メディアに完全オープンという意味で、ネットでの(生中継)放送は念頭になかった。透明性の確保は絶対にやっていかないといけないが、全国発信するかは、委員の意見を踏まえて配慮している。どう両立させるか腐心している。
 −県が議論が必要としている四十七項目すべてを有識者会議に諮るのか。
 水問題をどう考えるかという今の議論は、四十七のうち、二十九項目に対応している。残りは生態系で、今後やっていく。
 −どう取りまとめるか。
 まだ決定したものがあるわけではない。
 −二七年のリニア開業は厳しい。実施計画の再提出は求めるのか。
 認可を受けている側が判断すること。国が再提出を求める規定は法律上はない。

 うえはら・あつし 1987年運輸省入省、2000年奈良県企画部交通政策課長、08年国交相秘書官、13年交通計画課長、19年海上保安庁次長、20年7月から現職。兵庫県出身、56歳。

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