中1ギャップ、緩和狙う 広がる小中一貫教育

2020年9月10日 05時00分 (9月10日 05時00分更新)
カードを使って英語を指導する森教諭(左)=津市敬和小で

カードを使って英語を指導する森教諭(左)=津市敬和小で

  • カードを使って英語を指導する森教諭(左)=津市敬和小で
 小学校から中学校への円滑な接続を目指す「小中一貫教育」が広がっている。中学入学後に環境の変化に戸惑う「中一ギャップ」を緩和する狙いが大きいが、新学習指導要領で二〇二〇年度に始まった小学校の英語教育にも一役買っている。一方で地域差があったり、教員の負担が増えたりと課題も見え隠れする。(北村希)
 「トゥッ tennis(テニス)、プッ pen(ペン)、ア apple(アポー)…」。津市敬和(けいわ)小の六年教室で、隣接する東橋内(ひがしきょうない)中の森雅也教諭が手作りのカードを掲げながら唱え、児童らが大きな声で後に続いた。森教諭は「単語を読む時の練習になります。中学校でもずっとやるからね」と呼びかけた。
 津市では一七年度から全二十中学校区で小中一貫教育を展開。人権教育は必須として各校区ごとに九年間のカリキュラムを定めた。これ以外の内容は校区によって多様だ。
 東橋内中校区は中学校一校に対して小学校が一校の「一中一小」で、校舎が隣り合う「施設隣接型」。〇五年度から断続的に英語の教諭が敬和小の五、六年の授業を担う。同小の外岡博明校長は「小学校教員が専門ではない英語を教えるのは想像以上に大変。授業の進め方など教員が学べることも多い」と歓迎。「子どもも教科担任制を経験し、中学の先生の顔を知ると進学時の安心感が違う」と話す。
 森教諭は「やりがいがあり楽しい」とした上で課題も挙げる。授業時間やテストなどの時期が小中で異なるため、仕事が複雑になる。小中の教員の打ち合わせ時間は不十分なのが現状だ。市内では計三校区で英語教諭が乗り入れているが、その分の教員を増やす決まりはないという。
 小中の数や立地によってできることも異なる。「一中三小」で校舎が離れている「施設分離型」の小中一貫教育を実施する橋南(きょうなん)中学校区では、四校の教員が交ざって四部会を設けている。例えば「学力向上部会」では、家庭学習用ノートを小中共通にしたり、小六の卒業生に中学校からの春休みの宿題を出したり学習面で円滑な接続を進める。合同の清掃活動や発表会など児童生徒の交流も盛んだ。
 橋南中の酒徳宏校長は「小中の距離が縮まり、利点の方が大きい。教員の乗り入れは今のところ難しいが、それぞれの強みを生かす交流をしていきたい」と前を向く。
 市教委の調査では、市内の小六が中一に進学した際の不登校の子どもの増え方は、一四年度の三・二倍から、一九年度に二・〇八倍に減った。教育研究支援課の伊藤雅子課長は「校区全体で子を育てる意識が浸透し、一定の成果が出ている」とみている。

実施校倍増の見通し

 文部科学省の2017年度の調査によると、小中一貫教育の全国の実施件数は301件。23年度以降は625件に倍増する見通しだ。
 実施している自治体の23%が総合的に「大きな成果が認められる」、76%が「成果が認められる」とし、1%が「成果があまり認められない」と答えた。
 具体的な項目では、93%が「中1ギャップの解消」に成果があるとした一方、「教職員の負担増」「打ち合わせ時間の確保」を課題に挙げた自治体が各64%だった。
 文科省の18年度の「児童生徒の問題行動調査結果」では、全国の中学1年の不登校生徒は約3万人。同じ年度の小学6年の不登校児童の倍だった。

 小中一貫教育 小中9年間の学びが一貫した教育。小中の組織がそれぞれ独立し、小学校をいったん卒業して中学校へ入学する「小中一貫型小中学校」と、一つの組織下で9年間が連続した「義務教育学校」の二つの形態がある。学校教育法の改正で2016年度から開設が可能になった。


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