スズメとツバメ 仲良し兄弟にお母さんが遺言 しっかり守って今の姿に

2020年9月5日 05時00分 (9月5日 05時00分更新)
 昔、昔の話です。
 豊町(浜松市東区豊町)の辺りは、田畑が広がるのどかな農村でした。そんな村に飛び交うスズメとツバメにまつわる話を紹介します。
 スズメとツバメは、仲の良い兄弟でした。スズメは木や草の実を見つけると器用についばみ、ツバメは素早く飛びながら見事に虫を捕まえます。
 いつもと同じように、スズメとツバメが田畑の周りを飛んでいると、「お母さんが大変だから、急いで帰るように」と連絡がありました。何でもひどい病気になり、一刻を争うようです。
 スズメは話を聞くなり、大慌てで家に帰りました。
 「お母さん、具合はどう? 大丈夫⁉」と叫びながら家に入ると、寝ているお母さんの枕元に駆け付けました。勢い余って、お母さんの頭を蹴ってしまいました。
 「ご、ごめんなさい、お母さん。万が一のことがあったらどうしよう」
 スズメは、心を込めてお母さんの看病をしました。
 一方のツバメは、あちこち飛び回って汚れてしまった体を身ぎれいにしてからお母さんの元に行こうと考えました。紅をさし、おしろいを付け、黒い紋付きの羽織に着替えました。
 残念なことに、ツバメが家に帰った時、お母さんはすでに亡くなっていました。
 「いざという時に間に合わないなんて。羽織なんて着るんじゃなかった」
 スズメとツバメは悔やんでも悔やみきれませんでした。そんなスズメとツバメに、お母さんから遺言が残されていました。
 「スズメへ。お母さんの頭を蹴ったのは決して気にしないで。悪気がないのは分かっている。これからは地面を走らないで、二本足をそろえてピョンピョン跳ねればいい。足を鍛えれば、揺れる稲穂につかまってお米をもっとたくさん食べることができるはず」
 「ツバメへ。着替えが遅くなってしまったこと、気にしないで。きれいなツバメはお母さんの目にしっかり焼き付いている。これからは普段からお化粧をして、燕尾服を着たまま過ごしてごらん。飛ぶのが上手なあなたは、服を着たままでも大好きな虫をたくさん食べられるはず。家の玄関の軒先に土を使って丈夫な巣を作れば、いざという時も安心だね」
 スズメとツバメを見てください。お母さんの遺言を、今でもしっかり守っているようですね。

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参考文献:「続々 遠州伝説集」御手洗清


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