感染対策尽くし 浜松のクラスター3施設営業再開

2020年9月3日 05時00分 (9月3日 05時03分更新)
感染予防のチェックをする手品家浜松店オーナーの望月紳之介さん(左)。手前の木製の手はトランプを指し示す時などに使い、お客が直接トランプに触れないように工夫している=2日、浜松市中区千歳町で

感染予防のチェックをする手品家浜松店オーナーの望月紳之介さん(左)。手前の木製の手はトランプを指し示す時などに使い、お客が直接トランプに触れないように工夫している=2日、浜松市中区千歳町で

  • 感染予防のチェックをする手品家浜松店オーナーの望月紳之介さん(左)。手前の木製の手はトランプを指し示す時などに使い、お客が直接トランプに触れないように工夫している=2日、浜松市中区千歳町で
 浜松市内で七月下旬〜八月中旬に新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生し、休業していた飲食店など三つの施設が順次、営業を始めた。それぞれ消毒や予防策を改めて施し、再出発している。 (内田淳二)
 三施設のうち、十六人の感染者が出たマジックバー「手品家 浜松店」(中区)が一日、約一カ月ぶりに店を開けた。定員は三分の一ほどの十五席に減らした。入店の際は手の消毒や検温、連絡先の記入を実施。店の売りである手品ショーでもマスクの着用や、コインなどのマジック用品の消毒を徹底している。
 同じくクラスターが発生した中区のラウンジ「ブリリア」、東区のスポーツジム「フィットネス&スパ ゼクシス浜松」も、対策をとって営業を再開している。クラスターは従業員や利用客、その家族や友人に感染が広がり、三施設で計百七人に上った。内訳はブリリア八十六人、ゼクシス五人。

◆目に見える感染者が標的に

 SNSなどネット上の誹謗(ひぼう)中傷は、なぜ起きるのか。ネットメディアに詳しいジャーナリスト津田大介さん(46)は「ウイルスは目に見えない。感染者として目に見える形で現れた人や店を攻撃してしまう」と分析。特に匿名の空間であるネット上では「手軽に投稿できるため、より広まってしまう」と指摘する。
 中傷が続くことで懸念されるのは、当事者が感染を隠す流れができることという。一時感染が急拡大した東京・歌舞伎町では、区と店側が協力し検査を進め、ネット上での風向きが変わったといい、「取り組みを広く知らせることが大切だ」と強調した。
 愛知県豊橋市など、中傷を防ぐ条例の制定を検討する自治体が出てきていることに「表現の自由とのバランスが必要だが、そんな姿勢を発信することがとても重要だ」と話した。

◆手品家オーナー 中傷で心折れそうに 常連に励まされ

 「再開のめども立たず、閉店も覚悟していた」。手品家浜松店のオーナー、望月紳之介さん(32)を追い詰めたのは、休業による経営難に加え、会員制交流サイト(SNS)などで目にした「悪意」だった。
 店は七月二十一日、休業に入った。その後、従業員に感染が広がっていることが分かると、市の店名公表に先駆け、自らツイッターで感染者が出たと報告。客商売だけに「信頼が大切」と考えたためだ。
 間もなく、ネット上に心無い言葉が飛び交うようになった。「浜松の恥さらし」「店開けるな」。精神的にこたえたのが、ツイッターで広がった投稿。全く別の古びた建物の写真に「手品家閉店」と添えられていた。閉店を迫るような悪意しか感じなかった。
 救ってくれたのは、常連客らの励ましだった。「ブレるな、思った通りにしっかりやれ」。そんな言葉に活を入れられた。マジシャンが働ける場は限られる。従業員たちのためにも、「どうしても店を残したい」と奮い立った。
 経営難の中で心を決め、店内設備や手品の道具などを約九十万円かけて消毒した。客の手に触れる必要があるマジックでは、お客にデッサン用に作られた木製の手を使ってもらうなど工夫を凝らした。
 初日の一日には常連五人が来店し、再開を祝ってくれた。「感染症対策を強化しつつ、エンターテインメント性を損なわないよう知恵を絞った。お客さまには安全安心とともに『元気』を提供したい」 (広瀬美咲)

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