(57)「マウスピース」 歯並び守り虫歯を防ぐ

2020年9月1日 05時00分 (9月5日 09時52分更新)
マウスピースの型取りの最中に記念写真=名古屋市千種区で

マウスピースの型取りの最中に記念写真=名古屋市千種区で

  • マウスピースの型取りの最中に記念写真=名古屋市千種区で
 舌の切除手術から、やがて五年になります。手術によって口の中の環境は大きく変わり、今も日々変化しています。
 移植した皮弁が縮み、それに引っ張られて口の中の筋も硬くなるので、指で筋を押すマッサージが欠かせません。頬も同様にマッサージが必要です。そして、ここ数年で一番の変化は、下の前歯が内側に倒れてきたことです。内側から歯を支えてきた舌がなくなったため傾いてきたのです。それぐらい舌の圧力ってすごいんですね。
 今までは歯並びがきれいだと言われてきたので、少しショックでした。そしていろいろな弊害が出てきました。ご飯を食べると、傾いた前歯の裏に、ご飯粒が縦にはさまるようになりました。舌がないので歯間ブラシを使わないと取れません。食べ物をかみ切るのにも苦労するようになりました。
 何より怖いのは虫歯です。私は口全体に放射線を浴びているので、その副作用で細胞の再生力がなく、もし歯を抜くと穴がふさがらずに感染症を起こし、下顎骨(かがくこつ)の壊死(えし)を招いてしまいます。抜歯はご法度だし、歯列矯正もできません。抗がん剤治療中なので、免疫力維持の面からも、歯並びをこれ以上悪くしないようにする必要があります。そのために、寝るときにはめるマウスピースを作りました。
 リハビリでお世話になっている愛知学院大歯学部付属病院で、型を取って透明のマウスピースを作ったのですが、型取りの時に、口を開けて固まるのを待つ間、携帯電話を取り出して、その姿を自撮りする私を見て、先生も看護師さんも「こんな人、見たことない」と苦笑していました。この連載を始めてからは、普段から連載のネタを考えているので、自分の写真をよく撮るようになりました。
 できあがったマウスピースは、下の歯全体にかぶせて装着するだけです。二十歳の時に、顎関節症の治療でも同じようなものを使った経験がありますし、がんの手術後は発音と嚥下(えんげ)を助けるマウスピースも使っていました。今回は、どれよりも小さくて薄くて、違和感なく使用できています。
 これ以上、歯並びが悪くならないよう、そして少しでも長く自分の歯で食事を楽しめるように、リハビリと口腔(こうくう)ケアを頑張ろうと思っています。

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