落合博満氏の”究極”のチームワーク論って?今の中日には”スポ根魂”より少しの”毒”が必要なのかも…【増田護コラム】

2020年8月31日 13時03分

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1988年10月、中日が6年ぶりに優勝、グラウンドになだれ込んだファンから必死に逃げる落合博満

1988年10月、中日が6年ぶりに優勝、グラウンドになだれ込んだファンから必死に逃げる落合博満

  • 1988年10月、中日が6年ぶりに優勝、グラウンドになだれ込んだファンから必死に逃げる落合博満
 中日の自力優勝の可能性がいったん、消えた。このままズルズル沈むのか、それとも意地を見せるのか。こんな時は毒がある言葉をささげたい。
 強烈なひと言を吐いた人がいる。1986年オフの大型トレードでロッテから中日に移籍した後、落合博満さんは番記者だった筆者にこう問い掛けた。
 「なあ、チームワークって何だ? ドラゴンズはなんか勘違いしてないか」
 チームワークといえば、スポ根のハイライト。バレーボール漫画の「アタックNo.1」なら鮎原こずえに選手が駆け寄り、みんな頑張ろうと声をかけあって前を向く…。もちろん、落合さんのチームワークがそんなものであるはずがない。
 「みんな、傷口をなめあうのがチームワークだと思ってる。それは違う。例えばオレはサードだろう。ゴロをさばいて、とりやすい球を一塁に投げる。オレの仕事はそこまでだ。あとは取ろうが落とそうがこっちの知ったこっちゃない」
 細かな説明をしないのが落合流。額面通り受け止めればなんという自分勝手で冷酷な、となる。だが彼が言いたいのは、こういうことだった。ミスをかばいあい、仕方がないで済ませるな、個人がレベルアップしなければチームも成長しない。
 守備で自分がエラーした時も投手には謝らなかった。「打って返すから」なんて言い訳もしなかった。それどころかマウンドに行き、「ここは抑えろ」と命令した。そのセリフが一番投手の闘争心をかきたてると知っていたからだ。「でもな、口には出さなくてもエラーした時にはちゃんと打ってたぞ」と言う。内に秘める思いは人並み以上にあったのだ。
 打席に向かう時には、後続の宇野勝さんに「ウ~やん、頼むぞ」と声をかける時があった。初球から狙っていくから、もし凡退した時は粘ってくれよ、というお願いだ。主力打者が2球で2アウトになれば流れは一気に悪くなる。その事態を避けるためだった。宇野さんも「オチさんとはそういう野球ができた」と振り返る。これも高度なチームワークだろう。
 「でもな、お前、勘違いするなよ。オレの言っていることはサラリーマン社会の話じゃないからな。オレだってサラリーマンの経験があるから」
 筆者の行く末を心配したのか、この手の話をする時、落合さんは必ずそう付け加えた。でも、上司の顔色をうかがってばかりの組織に何が起きるというのか。少々の毒がなければつまらないと思うのだが。

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