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【石川】高齢者送迎一部に殺到 コロナ警戒 相次ぐ業務休止

2020年8月31日 05時00分 (8月31日 09時59分更新)
吉原和子さんを自宅まで運ぶ搬送業者の職員2人=金沢市二宮町で

吉原和子さんを自宅まで運ぶ搬送業者の職員2人=金沢市二宮町で

猛暑の中 感染対策徹底


 高齢者や病人を自宅から病院や介護施設に送迎する民間の業者が、新型コロナウイルスの影響を受けている。感染リスクを警戒して営業を休止する業者が増える一方、業務を継続している一部業者には依頼が殺到。猛暑が続く中、マスク姿の職員は感染に注意を払いながら、懸命に依頼に応えている。(小佐野慧太)
 「やったー」。野々市市内の老人ホームから金沢市二宮町の自宅に着いた吉原和子さん(77)は、満面の笑みを浮かべた。出迎えたのは夫の嘉祐(よしお)さん(79)。「うれしいねえ。妻が家にいてくれるのといないのとでは、えらい違いだ」と目を輝かせた。
 吉原さんは七年ほど前、難病の脊髄小脳変性症と診断され、二年前から寝たきり生活を送る。嘉祐さんと二人暮らしだったが、老老介護の不安から施設に入所。ただ、施設のコロナ対策でほとんど面会できなくなったため、八月から再び自宅で一緒に暮らすことにした。施設から自宅までの移動に呼ばれたのが、吉原さんがいつも利用する金沢市内の搬送業者だ。
 施設に駆け付けた職員二人が搬送用自動車のバックドアを開けると、車内からリフトがせり出し、担架が地面におりてきた。吉原さんを手際良く車に乗せると、「車内は暑くありませんか?」と女性が優しく語りかけた。およそ三十分で吉原さんの自宅に到着。二人は吉原さんを首に掛けた布製担架で抱え、ゆっくりと自宅の中に運び入れた。
 この業者は「これ以上、仕事の依頼が来たら対応できない」。事業所名を伏せることを条件に、取材に応じた。コロナの感染拡大を受け、搬送事業を休止する業者が相次いでおり、石川県内では搬送を一手に引き受ける形になっているという。県内から首都圏まで搬送することもある。
 吉原さんの搬送を担当した男性職員(47)は、かつて特別養護老人ホームの職員として働いた経験を持つ。高齢者をケアするノウハウを幅広く生かせないかと、十年前に搬送事業に乗り出した。「当時は県内に民間の搬送業者がほとんどなく、自分にとっては天職だと思った」と振り返る。
 事業所では現在、ストレッチャーや車いす、酸素ボンベ、ウイルス対策の防護服などを備え付けた搬送用自動車四台を所有する。搬送者の介助も必要なため、単なる移動のためのタクシーなどとは異なるニーズがある。男性を含む職員四人で、年間四千八百件の搬送を担っている。男性は「移動手段のない人がたくさんいる。私たちを必要としている人の生活を守れるように、コロナ対策を徹底するとともに、将来的には事業規模を拡大していきたい」と今後を見据える。

石川テレビで今夕特集


 北陸中日新聞は石川テレビ放送と「守る」という言葉をもとに取材し、共同報道企画「守る」を連載しています。石川テレビの特集は31日午後6時14分からの「Live News it!」で放送します。

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