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久保建の高い技術と視野の広さ生かすにはビリャレアルが最高のチーム【月刊ラモス】

2020年8月30日 19時56分

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ビリャレアルのマフラーを手に笑顔のラモス編集長

ビリャレアルのマフラーを手に笑顔のラモス編集長

 日本代表MF久保建英(19)のビリャレアル移籍が決まった。昨季スペイン1部リーグ5位の強豪で、前回の「月刊ラモス」でラモス瑠偉編集長が「久保が移籍するならビリャレアルかバレンシア」とイチ押ししていた名門クラブだ。この移籍についてラモス編集長は「最良の選択」ときっぱり。「ここで大きく成長し、自身のサッカーを磨き上げ、日本代表のサッカーを変えてほしい」と大きな期待を寄せた。
 ◇ ◇ ◇
 前回の月刊ラモスで、私は久保の移籍先としてビリャレアルを推した。結果的に久保と意見が一致していたわけだ。もう1チーム、バレンシアも候補に挙げたが、バレンシアの戦い方だとよりハードワークを求められるだろう。テクニックよりも運動量。久保の良さがより生きるという意味でも、ビリャレアルは最良の選択だと確信している。
 ビリャレアルはテクニックにせよ戦術にせよ、ものすごく基本を大事にしているクラブだ。育成の段階から、基礎の部分を徹底的に鍛える。実際にスペインに行って、ビリャレアルの下部組織の練習を見て、その徹底ぶりに驚かされたことがある。
 私は少年サッカーの「ラモスカップ」という大会を開催し、その大会で目についた選手で選抜チームをつくり、2014年と15年の2回、スペインに遠征したことがある。そのときにお世話になったのがビリャレアルだった。
 驚くほど育成のメソッド(方法)がしっかりとしており、6、7歳の子どもたちがパス&コントロールの練習の中で、動き方まできっちりと教えられ、それを習得していく。グループ練習の中で基礎をたたき込まれ、育成年代からしっかりと判断してゲームをつくり、組織的なサッカーをする。やっている内容は大人のサッカーだ。
 バルセロナやレアル・マドリードなど、スペインの名門クラブは育成部門も世界のトップクラスだ。退団騒動のメッシも、バルセロナの下部組織で育った。彼のサッカーは、バルサそのものであり、そう考えるとアルゼンチン代表でいまひとつ本領を発揮できないことも納得できる。
 スペインの名門クラブは、子どものころから10年以上の歳月をかけて徹底的に基礎の部分を築き、磨き、テクニックと戦術を融合させていく。だからこそ、あの華麗でスピーディーな組織的なサッカーが実現できるのだ。
 昨季はリーグ戦5位。バルサやレアル・マドリード、アトレチコ・マドリードとも互角に戦える力を持っている。戦術に裏付けられた組織的なサッカーは魅力的だ。しっかりとポゼッションし、ボールを動かし、チャンスとみれば一気にスピードアップして攻撃する。
 久保の高い技術と視野の広さを生かすには、最高のチームだと思う。久保の最大の武器は何か。私は、並の選手と比べてて見えているものが違うと思っている。ものすごくたくさんの情報を目から入れ、瞬時に判断する。だからいろいろなことができる。
 例えば、同じ日本代表でも中島翔哉と比較してみるとわかりやすい。彼もドリブル突破が得意だが、基本的には左サイドから中に切れ込み、右足でシュートを狙うパターンが多い。型にはまったときは威力があるが、言い換えるとずっと同じことをやっている。
 久保はいろいろなものが見えているからプレーのバリエーションがすごく豊富だ。ドリブルだけでなくパス、シュート。キックの種類もたくさん持っているから、いろいろなことができる。だからゲームに変化を与えることができる。
 町もこぢんまりとしているし、人もすごく温かい。サッカー環境も抜群だ。久保ならきっと成功する。スペインリーグでさらに磨き、欧州の高いレベルを経験し、日本代表に持ち帰る。彼なら日本のサッカーを、もうひとつ高いレベルに変えることができるだろう。
 鹿島の内田篤人が引退した。まだ32歳。惜しいが、完全主義者の彼らしい決断だと思う。長くドイツのシャルケ04で活躍し、その後、再びアントラーズに戻ってきてくれたときは、うれしかった。私は、海外で活躍した選手には、恩返しという意味でも、最後は日本でプレーしてほしいと思っている。内田がドイツサッカーのエッセンスを日本に持ち帰ってくれたその功績は、果てしなく大きい。
 かつて、日本のサイドバックは守る人だった。しかし、読売クラブの都並敏史が左サイドをガンガン攻め上がり、サイドバックの概念を変えた。その後、長友佑都というさらに攻撃的な左サイドバックが出現し、時を同じくして内田が右サイドを駆け抜けた。
 甘いマスクにそぐわぬファイター。激しく守り、ボールを受けた瞬間には攻撃のキーマンに変身する。献身的なハードワークで戻りも速い。なにより、鋭いセンタリングが魅力的だった。
 かつて奥寺康彦さんがドイツへの道を切り開き、長谷部誠がその道筋を広げた。そして内田と香川真司がドイツでの日本サッカーのステータスを高めた。欧州の強豪クラブで長くレギュラーをはる。それは本物であることの証しだ。
 けがとの戦いはつらかったと思う。しばらくは体を休めて、充電できたら再び日本サッカーのレベルを高めるために力を尽くしてほしい。本当にお疲れさまでした。(元日本代表)
◆ビリャレアル スペイン・バレンシア州カステリョン県ヴィラ・レアルに本拠地を置く。1923年に創設され、ホームは2万4890人収容のエル・マドリガル。ビリャレアルとはスペイン語で「王の町」という意味であり、エンブレムには王冠があしらわれている。リーグ最高の成績は07ー08シーズンの2位。

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