コロナ禍、あるデマから考える 敵つくる正義感の危うさ 三品信(文化芸能部)

2020年8月30日 05時00分 (9月1日 12時23分更新) 会員限定
関東大震災の朝鮮人犠牲者の追悼碑に献花し、手を合わせる人たち=昨年9月1日、東京都墨田区の横網町公園で

関東大震災の朝鮮人犠牲者の追悼碑に献花し、手を合わせる人たち=昨年9月1日、東京都墨田区の横網町公園で

  • 関東大震災の朝鮮人犠牲者の追悼碑に献花し、手を合わせる人たち=昨年9月1日、東京都墨田区の横網町公園で
 「ニュースにならなかったニュース」を問いたい。心からの反省とともに。
 七月の朝。中部地方のあるまちで暮らす知人との電話で、こんな話を聞いた。そのまちの近くに新型コロナで亡くなった人がいて、遺族が周囲のいやがらせを苦にして自殺したそうだ、と。「家の壁はひどい落書きで汚され、窓ガラスは投石で割られた。遺族の死後、残された家は親族が早々に取り壊したらしいよ」
 知人の沈痛な声を聞きつつ、強い憤りを覚えた。これは、自殺などではない。凶悪な「いじめ殺人」だ。出勤するとすぐ、コロナ取材班を率いる社会部長に伝えた。これでよし。取材班が事実を調べ、「自粛警察」どころではない現状を突く記事を書くだろう。
 その日の午後。部長から連絡があった。「結論から言うと完全なデマ」。何だそれ。全身が脱力した。部長は言う。この話は以前からその地域でささやかれ、地元の担当記者も知っていた。だが遺族は自殺しておらず、家もそのまま。近くの別の家が取り壊されたため、それがうわさの一因になったらしい。

「共有された情報」誤信

 ああよかった、自殺した人はいないんだ。一件落着−とはいかない。読者に事実を伝える記者としては、うわさを信じ...

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