高齢者に笑顔 訪問理美容 利用 富山、石川の300施設に広がる

2020年8月26日 05時00分 (8月26日 09時57分更新)
お年寄りの髪を切るスタッフ=富山県南砺市のデイサービス日向ぼっこで

お年寄りの髪を切るスタッフ=富山県南砺市のデイサービス日向ぼっこで

  • お年寄りの髪を切るスタッフ=富山県南砺市のデイサービス日向ぼっこで
  • 石崎和三社長

福光「髪や」20年前開始


 富山県南砺市福光の「髪(かみ)や」が約二十年前に北陸で先駆的に始めた訪問理美容サービスの利用施設が、富山、石川両県の約三百カ所に広がっている。老舗理美容店がビジネスチャンスととらえて開拓した分野だが、高齢者の健康にも役立ち、社会貢献にもつながっている。高齢化が進んだ現在でも同業者はまだ少なく、石崎和三(かずみ)社長(67)は「スタッフを増やして訪問できる施設や回数を増やしたい」と意欲を語る。(松村裕子)
 「風通しがよくなった」。南砺市福光の「JA福光デイサービス日向(ひなた)ぼっこ」で、八十代の女性が散髪してさっぱりした頭を鏡で眺め、笑顔を見せた。腰が曲がり、いすに座っても背中がつかず、手押し車がないと移動しにくい。街中の理美容店には行きづらく、デイサービスで定期的に訪問理美容を利用している。「頭が軽くなった?」「顔がつるつるになったよ」と声を掛けながら髪を切り、顔をそった女性理容師(46)は「会話が弾んで楽しい」と話した。
 髪やではホームヘルパーの資格をもつ女性の理、美容師十八人が月数回、各施設を訪問。寝たきりやベッド型車いすを使う難病患者にも対応する。「安心、安全、美の創造」をモットーに、店なら一時間半かかるカットと顔そりを二十分で効率的にこなし、価格を二千円程度に抑えている。
 訪問理美容サービスを始めたのは石崎社長が妻と、施設のお年寄りにサービスを提供できないかと考えたのがきっかけ。近隣に訪問理美容を手掛ける業者はなく、自分たちがビジネスモデルをつくろうと一念発起。訪問理美容の研修などを行う先進団体の現NPO法人・日本福祉ネットワーク協会(大阪市)の会員になり、手法を学んだ。
 当初は営業をかけても施設との信頼関係がなかったため受け入れられず、二年ほどは赤字だった。施設とのコミュニケーションをとる中で、お年寄りだけでなく介護する職員や家族が納得する髪形も考案し、口コミで利用が増えた。
 「散髪で気分がよくなれば体の健康にもいいはず。お年寄りの笑顔を見ることがスタッフの喜び」と訪問理美容サービスの意義を語る石崎社長。事業を継続し、まだこのサービスを知らない小規模施設にも手を広げるためにも「スタッフが社会貢献にプライドをもって働けるよう、給料など待遇をもっとよくしたい」と話し、修業中の長男(25)には「引き継いでやってほしい」と希望している。

関連キーワード

PR情報