証人買収事件 言語道断の司法妨害だ

2020年8月25日 05時00分 (8月25日 05時00分更新)
 ウソの証言を金で依頼した−カジノなど統合型リゾート施設(IR)汚職事件に絡み、衆院議員の秋元司被告に対する新たな容疑がそれだ。事実なら言語道断の司法妨害で、徹底捜査を求めたい。
 証人買収罪はいわゆる共謀罪とともに、二〇一七年施行の改正組織犯罪処罰法に盛り込まれた。何と国会議員がかかわった事件が初適用になった。
 もともと日本の法律では証人を威迫したり、偽証をそそのかす罪はあったが、金銭を伴う証人買収罪はなかった。法廷で虚偽の証言をさせたり、証拠の偽造を求めて、金銭などを提供すると二年以下の懲役または三十万円以下の罰金が科せられる。組織犯罪の場合なら刑はより重くなる。実際に金銭が渡らなくとも、申し込みだけでも罰せられる定めだ。
 東京地検によると、収賄罪で起訴されていた秋元容疑者は七月に支援者やその知人を通じて、議員会館での面会をめぐり、贈賄側の被告にウソの証言をするように依頼し、その報酬として二千万円を渡そうとしたという。
 贈賄側はいったん預かった札束の帯封番号を記録し、返却。東京地検が知人宅を家宅捜索したところ、同じ番号の札束が見つかり、また秋元容疑者の指紋も検出されたという。支援者は「秋元容疑者から偽証の依頼を働きかけられた」と供述しているともいう。
 本人は「証人買収には関与していない」と否定するが、容疑が事実なら国会議員が能動的に司法妨害を企てたことになり、到底看過できない。収賄事件の裁判を自分に有利に運ぶため、買収を図ったとすれば悪質という他はない。議員辞職に値しよう。
 刑事裁判は「調書主義」から、法廷での証言を重視する「公判中心主義」に移っているが、それをも踏みにじる。事件関係者との接触を禁じた保釈条件をも破っている。東京地検は捜査を尽くし、経緯を徹底解明してもらいたい。
 政府のIR整備は新型コロナウイルスの流行もあって遅延している。横浜市などの実施計画の公表も延期が発表された。そもそもカジノには国民の根強い反対論がある。
 汚職事件を受け、二月に共同通信が実施した世論調査ではIR整備を見直すべきだとの回答が77・5%にも達した。
 これを機に政府はカジノ計画を白紙に戻したらどうか。もっと世論に耳を傾け、そんなかじ取りを始めるべきではないか。

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