本文へ移動

「これは僕がやらなきゃ」石川遼が高校生を支援する理由

2020年8月22日 14時56分

このエントリーをはてなブックマークに追加
石川遼

石川遼

 新型コロナウイルスの影響で大会の中止が相次いだ高校生のため、プロゴルファーの石川遼(28)=カシオ=が24、25日、横浜市の横浜CC西で「The “One” Junior Golf Tournament(以下ザ・ワン)」を開く。全国から集まる出場96選手のPCR検査代を含め、主催者として総額1000万円近い運営費を全額負担する。そこには「人生の岐路に立つ高校生たちに、思う存分真剣勝負してもらいたい」との思いがある。
 「高校生、特に3年生は分岐点なのに、大会が軒並み中止になって、彼らには高校3年時の成績がない」。石川選手は大会を企画した意図をこう語った。
 コロナ禍で、高校生スポーツの全国大会が続々なくなる中で、ゴルフでも日本ジュニアや「緑の甲子園」と呼ばれる全国高校ゴルフが中止になった。
 部活動として完全燃焼したい子、強豪大学のゴルフ部を目指す子、ゴルフ場に就職して研修生としてプロを目指す子…。「去年から今年にかけて、めちゃくちゃうまくなっている子もたくさんいる。去年の成績だけで大学などから(スポーツ推薦や就職を)判断されたりするのは避けてあげたかった。『コロナで仕方ないよね』という部分をいかに削れるか、と思った」
 石川自身にとっても、高校時代は大きな岐路だった。杉並学院高1年の5月、初めて参加したプロツアーで優勝し、8月の日本ジュニアで優勝。翌年にプロ宣言し飛躍を遂げた。高校3年時には賞金王にも輝いたが、大学進学を真剣に考えた時期もあった。「あの頃、いろんな方に支えてもらったことで今の自分がある」。高校時代の経験や人との出会い、さまざまな決断の積み重ねが、今につながっていると考えている。
 だからこそ、大舞台での経験が貴重な高校生のために「日本ジュニアなどに匹敵する大会を」と企画。日本ゴルフ協会や日本高校ゴルフ連盟の協力も取り付け、「ザ・ワン」を開く。全国からトップジュニアの男女48人ずつ、2日間計36ホールで優勝を争う。
 開催に当たって最も気を使うのは、コロナの感染対策だ。男女プロツアーなどゴルフ関連5団体が制定したガイドラインに基づき、検温や問診票の提出、各選手はクラブハウスに入れず、駐車場から直接コース入りするなどの対策をとる。スタート間隔を空けて密を避け、ギャラリーは家族のみだ。
 さらに出場選手のPCR検査も義務づけ、陰性の場合にのみ出場できる。石川は「できるならやった方がいいと思った」とする一方、「検査代の負担のために出場をやめる子が出るのは僕の臨むことじゃない」と検査代は自身で負担することにした。
 PCR検査代は検査機関によって異なるが、1件2万5000円~5万円超。総額で400万円近くになる見込みだ。このために運営費用が倍近く跳ね上がったが、安全を確保することがより大事だと考えた。
 「スピード感が大事だと思って。『誰かやってください』と頼むのでは時間がかかる。なら全部自分でやろうと思った。野球も甲子園は中止になったけど、交流戦や独自大会で皆が真剣に闘っている姿を見て刺激を受けた。『これは僕がやらなきゃ』という使命を感じた」という。
 ゴルフ界全体の活性を望んでいるのは、今に始まったことではない。「ジュニアの子たちが臆さず『俺たちもプロですぐやれる』って思えるよう、戦いの場を作ってあげたい」と、自らの名を冠したジュニア大会は12年前から続けており、プロの大会出場権を得られるような大会もつくった。17年からはゴルフを始めたばかりの小学生から社会人までを対象とした大会も主催している。「ピラミッドの頂点と底辺を意識している」という言葉で、自らの取り組みを表現。プロを目指すトップジュニアの支援と、ゴルフ人口の裾野を広げることがライフワークだ。今回の「ザ・ワン」もそのプロジェクトの流れの一つ。
 「僕の大好きなゴルフをたくさんの人にやってほしいし、若い世代が活性化したらプロの世界の競争も激しくなる。今のジュニアは将来のゴルフ界を引っ張って行く子たち。いい意味での投資です」と熱っぽく語った。
 ◆石川遼(いしかわ・りょう) 1991年9月17日、埼玉・松伏町生まれの28歳。175センチ、71キロ。6歳でゴルフを始め、杉並学院高1年の2007年5月、マンシングウェアオープンKSB杯で史上最年少(15歳8カ月)でツアー優勝。翌年プロ転向し、史上最速で賞金1億円突破。プロ2年目の09年に4勝を挙げ、史上最年少で賞金王に輝いた。13年から米ツアーに本格参戦。18年からは日本ツアーを主戦場とし、選手会長に就任。昨年は3勝挙げ、史上最年少で生涯獲得賞金10億円を突破した。10年5月、優勝した中日クラウンズ最終日にマークしたスコア「58」は、世界最少ストロークとしてギネスブックに認定されている。

ゴルフ以外の競技でも動き

 ゴルフだけでなく全国大会を失った高校3年生を救おうという動きは、さまざまな競技で起こっている。野球では都道府県ごとの独自大会や甲子園交流試合を開催。さらに、プロへのアピールの場として、NPBと高野連が初めてタッグを組んだ「プロ志望高校生合同練習会」が8月に甲子園、9月に東京ドームで行われる。
 ラグビーでは元日本代表・野沢武史さんが発起人となり、ネット上で『#ラグビーを止めるな2020』プロジェクトが進行。選手のプレー動画をSNSにアップすることで、大学やトップリーグのリクルーターの目に留まるようにした。
 フェンシングは五輪の元代表選手らが発起人となり、クラウドファンディングで資金を集め、9月末に大会を行う。一度は中止された全国高校陸上は10月に順延され無観客で開催する。
 日本水泳連盟はスポーツ推薦に必要な全国大会の記録を担保するため、全国JOCジュニアオリンピック夏季大会を通信大会とし、各都道府県大会の記録を全国ランキングとして集計する措置を取る。

関連キーワード

おすすめ情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ