【実録 竜戦士たちの10・8】(100)「ひどいよ、あれは」中日・高木監督が怒りぶちまけ…与田剛の投球に横浜・ブラッグスの暴行
2025年6月13日 23時54分
「ひどいよ、あれは」。中日の高木守道監督が眼鏡の奥の目をつり上げ、怒りをぶちまけたのは1994年6月22日の横浜戦(ナゴヤ)だった。
前日のこのカードの初戦は先発の佐藤秀樹が打者17人に5安打、5四球の乱調で3回もたずKO。この日は鶴田泰が7イニングを3失点にまとめたものの、5四球がことごとく失点につながり連敗。またしても借金生活に突入し、3位転落ばかりか横浜にも同率で並びかけられた。
だが、高木の怒りの理由はそこではない。8回表無死二塁。与田剛の投球はブラッグスの左手甲をかすめる死球となった。すると一塁へ歩きかけたブラッグスが突然方向を変え、マウンドの与田めがけ猛ダッシュ。さらに二塁走者のローズも後方から与田を羽交い締め。そのまま引き倒された与田に、ブラッグスが左右のパンチを浴びせたのだ。
「中日戦での死球は今季3つ目だ。与田の態度も気に食わなかったから行ったんだ」とブラッグス。もちろんその場で退場が宣告されたが、この横浜の両外国人の暴挙に中日サイドが納得できるはずがない。
「そんなに危険な球じゃないと思ったし、最初から向かってくる気配がなかったから、まさかと思った。ローズに羽交い締めされ、押し倒された時にはわけが分からなくなったよ」
試合後も怒りが収まらない与田がこう言えば、高木も「出場停止10日間以下といったナマぬるい処罰だったら、こちらにも覚悟がある」と審判団に詰め寄った。
近年は球団の垣根を越えた交流もあり、打者も分厚い肘当てで防御しているため、こうしたグラウンドでの乱闘シーンもほとんどなくなったが、当時は死球を巡ってのにらみ合いは、どこの球場でも見られたものだ。
そして、このブラッグスの暴行に顔をしかめたのは中日側だけではない。「ブラッグスの気持ちは分かるが、辛抱できる範囲は辛抱しないと…」と、つい本音がこぼれたのは横浜の近藤昭仁監督だった。
連盟処分は「出場停止10日間、制裁金30万円」。ここまでの10日間を5勝2敗。5割まであと一歩の同率3位まで上がってきた横浜だったが、4番打者不在の10日間は2勝6敗と失速。”謹慎中”の24日を最後にAクラスに浮上することはなかった。 =敬称略 (館林誠)
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