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【実録 竜戦士たちの10・8】(99)ジェームズが三盗 竜に浸透し始めた「走ること」への意識改革

2025年6月11日 23時31分

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1994年6月20日付の中日スポーツ紙面


◇長期連載【第3章 走る巨人、もがく竜】
 「もうゲーム差なんてどうでもいいじゃないか。送りバントに走塁…。まあ、ミスが多すぎる」。広島―中日戦(広島市民)が雨で中止となった1994年6月18日。東京ドームではヤクルトの野村克也監督のボヤきが止まらない。
 巨人の先発・斎藤雅樹に8安打を浴びせ、164球を投げさせながらホームを踏めず完封負け。守っては川崎憲次郎が巨人打線を4安打に抑える力投。ただ、そのうちの1本は初回に松井秀喜が放った中堅へのライナーをクラークが目測を誤り三塁打にしたもの。直後に落合博満に適時打を許し。その1点を最後まで返せなかった。ついに、巨人とのゲーム差は2桁の10となった。
 斎藤は11日の中日戦(ナゴヤ)に続き、この年5度目の完封で9勝目。「いやあ、ヤクルトは今こそ低迷してますけど、戦力が整備されれば必ず出てきますよ」。長嶋茂雄監督のこんなコメントも、野村の神経を逆なでこそすれ、慰めにはならなかっただろう。
 前日、試合を流した梅雨の雨がまだ残る19日、中6日で広島戦の先発マウンドに上がったのは今中慎二だった。「今年一番悪かった」と振り返った立ち上がりは、いきなり正田耕三に先頭打者アーチを被弾。そして、中日ベンチばかりか、左翼席の一角に陣取るD党をもヒヤリとさせたのは4回だった。
 緒方孝市の痛烈なライナーが今中の左足を直撃。「当たった瞬間は痛くなかったけど、立ち上がろうとしたら力が入らんかった」と今中。それでも、ベンチ裏に下がって5分間ほどの治療を済ませると、再びマウンドに戻り、124球で2失点完投。ここまでオール完投での8勝目を挙げた。
 打線も13安打で7得点。大豊泰昭がリーグ単独トップの15号をかければ、立浪和義は猛打賞。打つべき役者が打っての快勝だが、それ以上に高木守道監督が目を細めたのは、確実にチームに浸透し始めた「走ること」への意識改革だ。
 2回にジェームズが広島の先発・川口和久の意表を突いて三盗を成功させれば、7回には立浪和義が二盗を決め、チーム盗塁数はリーグ2位の29に。前年のシーズン盗塁数に、早くも55試合目で並んだ。
 「数字に出ると、選手の気持ちも違ってくる。ジェームズの盗塁? そりゃ大きいよ。あれで川口もおかしくなったからね」。三たび連敗を止めたエースの力投に打線も呼応。さらに機動力も絡めての貯金1に高木もご満悦だった。=敬称略

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