【実録 竜戦士たちの10・8】(98)波に乗れない山本昌 復活星目前の逆転負け、責任を背負いこむ
2025年6月9日 23時35分
◇長期連載【第3章 走る巨人、もがく竜】
今中慎二の奮投で巨人に一矢報い、連敗を3で止めた中日は1994年6月14日からヤクルトを相手に金沢、福井と当時は恒例となっていた北陸シリーズ。金沢での初戦を立浪和義の2点適時打で逆転勝ちすると、翌15日は先発野手全員安打、今季最多の12得点で大勝した。
第2戦の先発は右の先発の柱にと期待されながら白星のなかった鶴田泰。この日も2回に2点を先制される不安な立ち上がりだったが、高木守道監督のアドバイスで3回からセットポジションでの投球に切り替えると制球も安定。打線の大量援護を受け、ようやく初勝利を飾った。
だが福井での第3戦は、前日10打数5安打5打点と打ちまくった立浪、大豊泰昭、彦野利勝のクリーンアップが一転、12打数無安打と沈黙。連勝も3でストップした。
巨人追撃へ、なかなか大きな波がこない中日だが、高木ら首脳陣の一番の気がかりは5月(1勝2敗)に続き、6月もここまで2連敗と勝ち星が遠い山本昌広だっただろう。
場所を広島に移した17日は、その山本昌が先発。試合は8回表を終わって3―0と中日がリード。7回までわずか2安打とくれば、D党は「今日こそは…」と左腕の復活星を期待し、地元の赤ヘルファンは敗戦を覚悟したはずだ。
ところが8回に1点を返され、にわかに雲行きが怪しくなる。9回はこの日、3打席全て三振に仕留めていた野村謙二郎に始まり、正田耕三、前田智徳と3連打され無死満塁。右打席に江藤智を迎えたところで、たまりかねた中日ベンチはリリーフに小島弘務を送り出したが、既に広島に傾いた流れは変えようがなかった。
小島が江藤に右中間を破られ同点。さらに二、三塁でメディーナの打球が中堅・伊礼忠彦の頭上を越え、まさかのサヨナラ負け。今中とともに、常に投手陣を引っ張ってきた山本昌にとっては92年7月以来の3連敗となった。
「今の僕はこんなもんですよ。防御率(4・13)通りってことです」。敗戦の責任を背負いこむように、足早に帰りのバスに向かう背番号34が、最後にひと言「情けない」とつぶやいた。
これでチームも、4月を無傷の4連勝でスタートした山本昌も5割へ逆戻り。金沢で6・5ゲームまで縮めた巨人との差も8と開いた。
=敬称略
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