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藤井二冠の長考は「最善手」という宝を探り当てる”壮大な旅”【記者の目】

2020年8月21日 10時55分

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史上最年少での二冠と八段昇段を達成。花束を手に笑顔の藤井聡太新王位=20日、福岡市内のホテルで

史上最年少での二冠と八段昇段を達成。花束を手に笑顔の藤井聡太新王位=20日、福岡市内のホテルで

 「2日制対局は藤井七段にとって最も力を発揮できる舞台。きっと伝説のシリーズになる」。今期王位戦開幕時、記者はそう書いた。4連勝には驚いたが、長考派の藤井棋聖にとって持ち時間8時間が大きなプラスになったのは確かだろう。
 若き天才の快進撃は数々の記録だけでなく、棋界の常識も塗り替えつつある。長考もそう。棋界にはこんな格言がある。「長考に好手なし」。長考するのは通常、相手に意表を突かれて迷っているからで、その結果として指される手に好手はないという意味だ。
 ところが、藤井棋聖の長考は見ている者をワクワクさせる。それが最善手という宝を探り当てる“壮大な旅”であることを多くのファンが知っているからだ。そこには天才ゆえに成り立つ方程式がある。「天才+長考=最善手」がそれだ。
 長考と一口に言っても天才のそれが異質であることは、昭和の大棋士も指摘していた。藤井棋聖の4代上の師匠・木村義雄十四世名人だ。木村名人が「本当の天才」とリスペクトしていた先輩棋士に土居市太郎名誉名人がいた。両者が激突した昭和15(1940)年の第2期名人戦第1局についての回想がある。
 早指しで知られ、大抵の局面では10分もあれば結論に達するといわれた土居名誉名人が珍しく181分の大長考。そこで指された手を見た木村名人は、全身から汗が噴き出すのを感じたという。「私の気づかなかったところを、よく読まれたと敬服したのだが、それだけにこちらもほとんど困った」(木村義雄著・将棋一代)
 勝負は54歳の土居名誉名人が最終的に疲れから敗れたものの、天才が本気で長考したらどうなるかを示した歴史的一局といえた。「天才+長考」が織りなすドラマ。私たちもこれからたっぷり目撃できるはずだ。(海老原秀夫)

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