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SNSから始まった不登校の子スポーツイベント…女子バスケの支柱・高田真希の思い…参加者の感想を読むと胸が熱くなる

2025年5月28日 12時18分

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高田真希

高田真希

◇記者コラム「Free Talking」
 「あっ、今年もやったのか!」。ウェブ担当のデスクとしてX(旧ツイッター)のタイムラインをスクロールしているとバスケットボール女子日本代表の高田真希(35)の投稿が、老眼が進み、かすむ目にとまった。不登校の子どもたちを対象にしたスポーツイベント開催の報告。添付された参加者の感想を読んでいると、記者、小学生の子を持つ親としても胸が熱くなった。
 昨夏のパリ五輪直前の6月―。高田が主催した学校に行けていない子と親を集めたイベント「夢中になろう!」の第1回が開かれた。日本代表戦が行われた札幌市から愛知県に戻り、つかの間のオフを使って“交流”。その後、すぐに東京に移動して代表チームに合流した。当時、パリ五輪担当記者だった私は、気になって高田に真意を聞いた。
 「不登校の親御さんからSNSでメッセージが送られてきて『学校に行けていないけど、(Wリーグの)試合を見に行って、子どもが感動した』とか。それが2、3件とかではなくて、10件以上来ていた。SNSがあるからこそ直接届いた声。『あ、そういう子もいるんだな』と気付いた。学校には行けないけど、そういう場には行ける子がいる。だったら、自分ができることもあるなと思って企画しました」
 国内リーグ戦終了後、代表合宿、国際試合、再合宿と多忙な日程の中に組み込んだ企画だった。ベテランの超人的なスケジュール。五輪に向けた体のメンテナンス、休息はほしくないのか―。東京五輪銀メダルチームの主将は、へろへろの40代中年記者を見て、諭すように言った。
 「現役でしか生み出せない価値が、何かあるんじゃないかと思っていて。あと、自分は若くないので、残り限られた時間の中で、トップレベルの選手のうちでしか伝えられないことがあると思っている。やりたいことをできないことの方が自分にとってストレスになりますね。何もしない休みは引退した後にいくらでも作れるし(笑)」
 コート上とは違った優しい目で現役にこだわる理由も語ってくれた。自身で会社も設立、高田“社長”は町おこしイベントなどを手伝ってきたノウハウも持っていた。不登校の子を応援する心も技もそろっていたからこそできた過密日程での芸当だったと思う。昨年7月3日、高田は第1回に参加したの親の声と共にこうXに投稿している。
 「学校に行くことがすべて、学校に行ってほしい…とは正直私は思ってないです。夢中になる事の楽しさ、挑戦する事の大切さ。私はバスケットに夢中になり、様々な事に挑戦した結果こうなれました。バスケットキャリアの中で学びました。挑戦してくれた事が嬉しかった! このイベントがキッカケとなった事が嬉しかった。一歩一歩自分のペースで歩めば良い! 挑戦に失敗は付きもの! だけど挑戦しないと成功はない! そして失敗は経験だ! 私が勇気をもらった!! 明日の試合から今度はプレーでみんなにエネルギーを届けるぞ!『夢中になろう』ではボッチャもやります」
 正直に言うと…。パリ五輪中にこの話を記事にしようと思っていた。だが、前回大会2位の日本が予想外の3戦全敗。書く「タイミング」を失った。書きたかった。いや、書き残したかった―。どこかで、記者の頭と心に引っかかっていたのかもしれない。約1年後の5月。だからか、Xのタイムラインに入ってきた高田の投稿が“デジタル疲労の目”にもすっと入ってきた。高田が継続して2度目を開催したから、書く「タイミング」を再び頂けた。
 SNSによるアスリートへの誹謗(ひぼう)中傷が社会問題となることも増えた。デジタルのデスクをしているとひどく、醜い言葉も目にする。一方で、高田のようにSNSから気づかなかった声を拾って、「スポーツの力」で迷う子どもたちに「夢中」のきっかけを提供する選手もいる。日本バスケ界の揺るがない支柱はこうも言っていた。
 「批判は一部だけ。直接届くから、何人もいるのではと思ってしまうけど、実際には少ない。価値があると思った人だけが共感してくれれば良い。自分だけのモチベーションだけだと(現役は)終わっているかもしれない。長くやったし、メダルもとったからって。でも、『自分ができることがある』と思うからこそ、続けられるし、若くいられるのかな」
 スポーツで、バスケットボールで磨かれた魂が、彼女の口を動かしていたのを思い出した。(パリ五輪担当、占部哲也)

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