本文へ移動

残念なステルヴィオの出走回避…札幌移動後の熱発が理由だが、そもそも『輸送熱』ってなんだ?

2020年8月20日 11時10分

このエントリーをはてなブックマークに追加
輸送によって発熱したが、20日に札幌ダートに入ったステルヴィオ

輸送によって発熱したが、20日に札幌ダートに入ったステルヴィオ

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」


 エルムSから中1週で再び札幌を取材している。札幌記念はもちろんだが、翌週のキーンランドCを想定する作業も重要な任務。その中で残念なニュースに出くわした。ステルヴィオがキーンランドC(G3・30日・札幌・芝1200)を回避することになった。
 サンデーサラブレッドクラブの発表によると、7月29日に美浦帰厩して乗り込み開始。12日に美浦Wで時計を出した後、14日発で札幌へ輸送した。15日午前に札幌に入厩してから徐々に体温が上昇し、一時39・5度になったという。
 長距離輸送の直後だけにいわゆる輸送熱だろうと思われる。「いわゆる」としたのは、そもそもこの「輸送熱」が診断名としては使われないからだ。輸送によるストレスの関連が強く疑われ、熱発が主訴となる症候群をして慣習として「輸送熱」と呼ぶ。ヒトが軽度の熱発や呼吸器症状に悩まされた際、原因のウイルスを特定することなく「風邪」と呼ぶのと同じだ。
 風邪を引き合いに出したが、輸送熱のほとんどは呼吸器疾患の発生に続発して起こる体温の上昇で、特に39度を超える輸送熱の症例は、多くが肺炎を発症していることが知られている。ステルヴィオの場合は、19、20日と馬場入りしているので、決して重いものではないだろうが、輸送熱の症例の中には、肺炎から胸膜炎に移行して、予後が悪くなるケースもある。
 輸送時の休憩を増やしたり、実験的な薬物投与によって馬の免疫活性を図ると発症リスクが低減されることが知られている。輸送によるストレスが気道の異物排除システムを弱体化させるなどして、免疫機構を抑制すると考えられている。
 かつては馬運車内のアンモニア濃度やほこりの増加も大きな問題だったが、馬運車の改良も日進月歩。こうした点は解決されつつある。それでも輸送熱がなくならないのは、馬にとって「自らが立っている地面(あるいは床)が動く」ということ自体が最大のストレスだからだ。こればかりは馬を運ぶ以上、どうしようもない。

関連キーワード

おすすめ情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ