うばが橋 乳母身代わり、幼い娘生き返る

2020年8月15日 05時00分 (8月15日 05時00分更新)
中心街を流れる新川に架かる姥ケ橋の欄干=浜松市中区で

中心街を流れる新川に架かる姥ケ橋の欄干=浜松市中区で

  • 中心街を流れる新川に架かる姥ケ橋の欄干=浜松市中区で
 昔、昔の話です。
 今の田町(浜松市中区田町)の辺りは田や沼地が多く、大きな池もありました。
 近くの町に大金持ちが住んでいました。その家には幼い一人娘がいました。両親はとてもかわいがり、宝物のように育てていました。親だけでは万が一のことがあったら大変だと、乳母もつけました。とても優しく子育て上手な乳母で、娘もなついていました。
 ある夏のことです。娘が突然高い熱を出しました。両親はもちろん、乳母も懸命に看病しました。家だけではどうにもならず、医者の手配をした直後に、娘の息が絶えてしまいました。
 あっという間の悲しい出来事に、両親も乳母も泣き続けました。父親は気持ちを抑えることができず、乳母にぶつけてしまいました。「取り返しのつかないことになる前に、どうして気付けなかったのか」
 乳母には何一つ落ち度がなかったものの、乳母にとってもかけがえのない娘を亡くしてしまったつらさは計り知れません。
 乳母は、近くの池のほとりに走りました。
 「神様、お願いします。私の命をささげますので、どうかお嬢さまを生き返らせてください」
 乳母は、池に向かって手を合わせ深々と拝んだかと思うと、身を投げました。 
 その時です。乳母の命をかけた願いがかなったのか、両親の家で娘が息を吹き返しました。
 両親は、死んだはずの娘が生き返り、今度はうれし涙を流して喜びました。
 「ばあやは、どこ?」
 目を開けた娘が、辺りを見渡してつぶやくと、両親は乳母がいないことに気付きました。

◆身投げの池に亡きがら

 家の中や屋敷の周りのどこを捜しても、乳母は見当たりません。そのうち、池のほとりに乳母の履物がそろえて置かれているのが見つかりました。
 「ばあやは池に身を投げたらしい。ひどいことを言ってしまい、申し訳ないことをした」
 父親の話を聞いた娘は池まで駆けだし、何度も乳母を呼びました。すると、どうしたことでしょう。どんなに捜しても見つからなかった乳母の亡きがらが浮き上がってきたのです。
 この池は「乳母が池」と呼ばれ、池の入り口に架かっていた橋は「乳母が橋」と呼ばれるようになりました。池は埋め立てられてしまいましたが、今でも田町には「姥ケ橋」が架かっています。

<もっと知りたい人へ>
参考文献:「わがまち文化誌 浜松中心街の今昔」浜松市立中部公民館編


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