怪しい抗体検査キット 浜松・夜の街関係者に流通

2020年8月10日 05時00分 (8月10日 05時02分更新)
浜松で出回っている抗体検査キット。大きさはライターくらい。「C」(矢印)の線が1本のため陰性=飲食店関係者提供

浜松で出回っている抗体検査キット。大きさはライターくらい。「C」(矢印)の線が1本のため陰性=飲食店関係者提供

  • 浜松で出回っている抗体検査キット。大きさはライターくらい。「C」(矢印)の線が1本のため陰性=飲食店関係者提供
 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した浜松市中区の繁華街で、不安の高まりから、自分で感染の有無をチェックする「抗体検査キット」が飲食店関係者の間で出回っている。ただキットの中には製造元や流通経路が不明のものもあるとみられ、専門家は「信頼できるものではない」と注意を呼び掛ける。 (篠塚辰徳)
 「今は自分で自分の身を守るしかない。この辺のお店は、使った人が多いみたいですよ」。飲食店で働く三十代男性は入手先を伏せたものの、使用したキットの画像を見せてくれた。キットは六千円ほどで、感染した後に免疫として体内にできる「抗体」の有無を調べられるという。針のようなもので指を刺し、血を検査用の透明な液体と混ぜる。それを本体にたらすと五分ほどで結果が出る。赤い線が二本出ると陽性で、「C」の部分に一本だと陰性。男性は陰性だった。
 キットには日本語の説明書がついていたが、製造元や結果の精度は「分からない」と男性。七月下旬のクラスター発生で街には不安が広がり、ここ二週間ほどで急速に出回ったという。市が接待を伴う飲食店の従業員に行うPCR検査の受け付けは十一日からで「実施はありがたいが、遅い。キットはお守りみたいな感じ」と話す。
 キットはどのように出回っているのか。流通事情に詳しい男性は「仕入れ値は一個二千〜三千円。関東から流れてくる。(春先のマスク不足の時に出回った)中国製の安いマスクと同じようなルートってこと」と明かす。中国本土や台湾、香港などからの輸入品とみられ、市内での取引価格は一個六千〜七千円。個人や、アルコール消毒液などを扱う業者が売買しているほか、大量に仕入れた飲食店が他の店に配っているという。「精度は五割くらいって聞いてるけど、実際はどうなんだろうね。でもみんな使いたがっている」
 キットは国内企業も販売しているが、製造元が明示されていないものもネット通販で二十五個十三万円、十個で七万二千円といった値段で売られている。こうした状況に、日赤はホームページで「多くの検査キットがあるが、その性能を十分に評価されたものはない」と注意を促す。
 浜松医療センターの矢野邦夫院長補佐も「抗体を測定するものだとしても、感染から二〜三週間後の状態をみる検査のため、その時点での感染の有無は分からない」とPCR検査との違いを解説。感染していないのに陽性になる「偽陽性」が出る可能性もあると指摘している。

<新型コロナウイルス感染症の検査> 行政機関や一部民間が実施しているPCR検査は、検査時点の感染の有無が分かる。喉や鼻を綿棒でこすって採取した粘液を使い、ウイルス特有の遺伝子配列を専用の装置で増幅して検出する。結果が出るまでに数時間かかるが、精度は高いとされる。抗体検査は血液を採取し、感染後に体内にできる抗体の有無を調べるもので、過去に感染したことがあるかが分かる。PCR検査に比べ精度は劣るとされる。


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