本文へ移動

【石川】塀の中 感じる普遍性 映画「プリズン・サークル」対話で更生 島根の刑務所

2022年7月31日 05時05分 (7月31日 10時50分更新)

映画の一場面。受刑者は対話を重ね、自身の過去や罪と向き合う=ⓒ2019 Kaori Sakagami

「自分らしく生きる 難しい」
 金沢の企業 来月5〜7日 21美で上映会

 石川、富山両県で障害者の就労支援やキャリア教育を手掛ける金沢市の企業「ヴィスト」が八月五〜七日、金沢市広坂の金沢21世紀美術館シアター21で、刑務所のドキュメンタリー映画「プリズン・サークル」の自主上映会を開く。二〇二〇年の劇場公開後はプライバシー保護のため、ディスク化や配信はされていない作品。隔絶された塀の中に、一般社会と地続きの普遍性を見いだし、鑑賞機会を設けた担当者は「自分ごととそうでないことの境界を、少し広げる機会に」と期待する。(古谷祥子)
 島根県浜田市の「島根あさひ社会復帰促進センター」は官民協働刑務所。米国の刑務所をモデルに、対話を通した受刑者の更生プログラムを、国内で唯一実施する。映画は一四年から二年間撮影し、受刑者四人に密着。幼少期の貧困や虐待、かつての被害者が加害者に転じた境遇が浮かび上がる。同時に彼らは苦手としてきた感情表現や本音を吐露することで、過去に犯した罪と向き合う。
 「ヴィスト」取締役の温井(ぬくい)珠希さん(47)は昨秋、作品の評判を聞き、仙台市まで足を運び、鑑賞した。犯罪を正当化する受刑者に、価値観の多様性を考えさせられた。対人支援の仕事に携わり「自分らしく生きるのが難しいのは、刑務所も社会でも同じ。うまくいかなくても、やっていかなくてはいけない」と日々感じていた思いを強くした。自身をも省みた上で「自分が大事にしているものとの接点に気づく人が多いのでは」と話す。
 上映会は五日午後一時半と五時、六日午前十時と午後二時、七日午前十時、午後二時、五時半の計七回。上映時間は二時間十六分。六日は上映後に坂上香監督の講演会がある。当日券のみで五、七日が千五百円、六日は千八百円。

坂上香監督

▽坂上監督「抱えている問題 見いだす社会に」

 映画製作は、取材許可が出るまで六年を要した。坂上香監督(57)は撮影開始半年前まで、この刑務所でワークショップの講師を務めていた。受刑者と信頼関係を構築したが、撮影時は職員の監視下で、厳しい制約が課された。
 対話プログラムに参加する受刑者の顔つきが和らぎ「最初はしゃべれなかったのに、次第に言葉を獲得していく」変化を目の当たりにした。出所後の元受刑者を取材すると、自由度の高い刑務所ならではの日常生活で、人間関係を築く大切さを語ったという。
 「刑務所ものとゲテモノ扱いされるのは嫌だったが、一般社会につなげて考えてもらえた」と反響に驚いた。自主上映での作品の広がりを歓迎し、「多かれ少なかれ、周りには言えない問題を抱えている人はいる。問題がないとするのでなく、足元でできることを見いだす優しい社会になってほしい」と語る。

関連キーワード

おすすめ情報

北陸発の新着

記事一覧