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津波避難の対策強化を 244高齢者施設が浸水想定

2022年6月20日 05時05分 (6月20日 05時07分更新)
津波避難ビルに指定され、屋上に太陽光発電パネルが設置された有料老人ホーム「庵原屋日和館」。津波がさかのぼる川が近くを流れる=静岡市清水区で(山本真嗣撮影)

津波避難ビルに指定され、屋上に太陽光発電パネルが設置された有料老人ホーム「庵原屋日和館」。津波がさかのぼる川が近くを流れる=静岡市清水区で(山本真嗣撮影)

  • 津波避難ビルに指定され、屋上に太陽光発電パネルが設置された有料老人ホーム「庵原屋日和館」。津波がさかのぼる川が近くを流れる=静岡市清水区で(山本真嗣撮影)
  • 津波を想定し、利用者を背負った避難の確認をする職員たち=静岡市清水区で(庵原屋日和館提供)
 参院選の公示が二十二日に迫る。長い海岸線を持つ静岡県内では、南海トラフ巨大地震などによる津波の懸念もあり、津波防災への関心も高い。県によると、昨年三月現在、津波の浸水想定区域内にある高齢者施設は十九市町の二百四十四施設に上る。寝たきりや認知症の高齢者も入所する施設では、津波到達までの避難が難しいケースもあり、対策が急務だ。 (山本真嗣)
 「最大級の津波が来たら、お手上げ」。県内で海から数百メートルの特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人の防災担当の男性職員が苦しげに明かした。南海トラフ地震が発生すれば、最大一〇メートル超の津波が来ると想定されている。
 津波となれば入所者を施設外へ移動する時間はなく、上の階に避難する計画。訓練して津波到達までに避難できるよう備えているが、最大級の津波の場合、「屋根のてっぺんが出る程度」まで水に浸る。高台移転も視野に入れるが「自力では歯が立たない。行政の支援が必要」と訴える。
 別の自治体にある海に面した有料老人ホームも水没すると想定され、高台に徒歩や車で避難する計画になっている。健常者でも歩いて十分はかかり、津波到達までの全員避難は「不可能」。利用者の家族には職員の避難を優先させることがあると伝えている。
 一方、静岡市清水区の有料老人ホーム「庵原屋日和館」は六階建てで、市から津波避難ビルの指定を受けている。外付け階段に太陽光発電による照明などを市の補助で設置し、災害時は地域に開放する。
 周囲は最大二・五メートル浸水の想定。水の来ない二階以上が居住エリアだが、念のため三階以上に避難する計画。自力歩行が難しい入所者は職員が背負い、避難してきた地域の人にも協力してもらう予定。懸念は人手の少ない夜間に想定を超える津波が来る場合で、施設長の鈴木敏博さん(71)は「地域の力が必要」と語る。
 この三施設がある自治体はいずれも、避難対策の強化を促す「津波災害警戒区域」に指定されていない。市町の同意の上、知事が指定する制度で、区域内の高齢者施設などは避難確保計画を市町に報告、公表する義務があり、行政や地域との連携が強まって避難対応の改善が期待されている。
 ただ、指定区域内では不動産取引で告知義務が課され「津波の危険がある地区」と敬遠されるとの恐れが根強い。対象区域がある四十都道府県のうち、一部でも指定したのは静岡など二十道府県。県内も、対象の沿岸二十一市町のうち六市町にとどまり、静岡市など七市が新たに同意の意向を示している。国は本年度、区域内の防潮堤整備などを交付金の重点配分の対象に加え、指定を促している。
 静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は「指定を受けることで津波のリスクが地域の共通認識になることが重要。移転が必要な施設もあり、現状の制度で解決できないのであれば、政治が動かなければいけない」と指摘する。

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