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<備える> 特別編 むすび塾@311メディアネット 教訓も知恵も地域超え共有

2022年3月7日 05時00分 (3月7日 05時00分更新)
ワークショップを終えて誓いの言葉を掲げる参加者

ワークショップを終えて誓いの言葉を掲げる参加者

  • ワークショップを終えて誓いの言葉を掲げる参加者
  • 坂上野々香さん
 中日新聞や河北新報など全国の地方紙、放送局でつくる「311メディアネット」は2月11日、全国13カ所をオンラインで結び防災ワークショップ「むすび塾」を開催した。宮城県東松島市から大学生が中継で東日本大震災の語り部を務めたほか、各地で災害伝承や防災に取り組む10〜30代の若者が災害の教訓を共有した。
 東松島市大曲小五年で被災した東北学院大(宮城県)三年の雁部那由多(がんべなゆた)さん(22)が語り部を務めた。現地から地震発生後の避難行動をたどりながら、約五メートルの津波に襲われた大曲小での体験や震災伝承の課題を語った。
 質疑応答でお年寄りに避難行動を促す方法を問われた雁部さんは「震災で逃げた理由に『気に掛けてもらったから』という回答があった。訓練などで、あなたにも助かってほしいと伝えることが大事だ」と答えた。
 雁部さんの話に続き、話し合いの前半は、各地の参加社がそれぞれの地域の自然災害と教訓を報告した。北見工業大(北海道)四年の林崎翔汰さん(22)は、二〇一八年の北海道地震で全域停電(ブラックアウト)が起きたことを踏まえ、「冬に停電が起きて暖房設備が停止した時の対策を考える必要がある」と話した。
 一九四四年に発生し、千二百二十三人が亡くなった昭和東南海地震を調べたのは名古屋大二年の坂上(さかうえ)野々香さん(20)。将来の南海トラフ地震を念頭に「被害を減らすために過去の地震や津波を知ることが大切だ」と語った。
 福井県永平寺町の看護師前川莉沙さん(29)は小学六年で、二〇〇四年の福井豪雨を体験した。「家族は床上浸水してようやく避難した。早めの行動が必要だった」と振り返った。
 宮崎市熊野では一六六二年に津波などで二百人が亡くなった外所(とんどころ)地震の供養碑が、約五十年おきに建立されている。宮崎大二年の盛満優雅(もりみつゆうま)さん(20)は「外所地震を広く伝える必要があるが、現状は認知度が高いとはいえない」と明かした。
 助言者を務めた東北大災害科学国際研究所の今村文彦所長は、災害情報を入手する際の注意点として「善意で間違った情報が会員制交流サイト(SNS)で伝わる場合もある。公共の情報にアクセスし、確認してほしい」と求めた。
 後半は日頃の備えや防災活動の知恵を出し合った。子どもが防災に親しむアイデアについて、神奈川県金沢総合高一年で防災士の橋本玄(はるか)さん(16)は「自分なら遊びながら学びたい。防災講習で防災運動会、防災キャンプなどに取り組んでいる」と話した。
 静岡県焼津市のIT企業サンロフトの小林大介さん(30)は「仮想空間のメタバースに自分の町や学校を作ることで、避難や消火といった活動もできる」とITの活用を呼び掛けた。
 災害時の判断力を養うカードゲーム「クロスロード」を紹介したのは関西学院大(兵庫県)一年の長谷川侑翔(ゆうと)さん(19)。「頭を使うと印象に残るし、防災に向き合うきっかけにもなる」と述べた。
 若い世代に防災をPRする工夫として、龍谷大(京都府)三年の川端麻友さん(21)は「食事宅配サービスのように目立つリュックで学生に防災グッズや非常食を届け、その様子を動画配信したら面白いのではないか」と提案した。
 高知国際高一年の畑山莉晏(りあん)さん(16)は、家族と被災時の集合場所を決めているほか、十円玉を持ち歩いている。「携帯電話の電池が切れても公衆電話を利用できる。行く先々で公衆電話の場所を確認している」
 「防災授業で小さな子どものいる家庭に、新聞紙の用意を勧めている」と話すのは、関西大(大阪府)二年の牧野葵さん(20)。「体に巻くと保温効果があるほか、簡易トイレに入れると防臭効果もある」と説明した。
 最後に今村所長は「皆さんが呼び掛けだけでなく、実際に活動していることを頼もしく思った。活動を外国人にも広げ、話し合いで学び、気付いたことを実践してほしい」と激励した。

中高生の意識高めたい 名古屋大2年・坂上野々香さん

 所属するサークルでは、児童福祉施設で防災教育をしたり、SNSで防災情報を発信したりしている。コロナ禍で被災地に行けないが、今は勉強して皆で防災の知識を身に付けたいと思う。
 むすび塾では、同じ世代の話を聞いてすごく刺激になった。インスタグラムなどいろんなメディアを使って防災の取り組みを広める方法は参考になる。愛知県でも中高生の防災意識をもっと高めたいとも思った。
 「車輪の跡」を意味するサークルの名前「轍(わだち)」は、過去の人が残したことから学び、同じような被害を受けないようにすることが由来だ。今後起きると言われている巨大地震に備え、災害で悲しむ人を一人でも減らしたい。
 (横井武昭)

 311メディアネット 河北新報社が展開する防災の巡回ワークショップ「むすび塾」を共催した全国の地方紙、放送局が参加するネットワーク。防災機運を盛り上げるため、東日本大震災の発生日前後に共通タイトルの特集や連載、番組を組む。今年が5回目。
 【共催一覧】
 北海道新聞、河北新報、東京新聞、神奈川新聞、静岡新聞、中日新聞、京都新聞、毎日放送、神戸新聞、福井新聞、高知新聞、宮崎日日新聞


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